こんにちは!こんにちは!


僕は2段ベッドの下で寝てるんです。
上は弟が使ってまして。
夜中にね
物凄く嫌な夢を見て眼が覚めたんです。
内容は忘れてしまいました。
そしたらベッドの横に何かが立ってるんですよ。


物凄く背の高い人間のように見えました。
足だけしか見えないんです
ちょっと考えてみてください。
2段ベッドの横に立っていて。
寝ている僕から足しか見えない。
こんなに足ばっかり長い人間いるわけ無いじゃないですか。
しかも夜中に僕と弟の部屋に。


おまけにね、輪郭もはっきりしないんですよ。
もちろん夜ですから真っ暗ですけどね。
ぼんやりとは見えるはずじゃないですか。
でも、そいつ真っ黒なんだ。
周囲の暗がりよりまだ黒いの。

そこまで気がついてぞーっとしてしまいました。
これはこの世のものではないぞって。


でね


上の段で弟がうなされてるのが分かるんですよ。
黒い人間が弟の耳元でなんか囁いてるように僕には思えました。
かすかにボソボソって呟いてるような音が聞こえましてね。
恐ろしくて恐ろしくて。
指一本動かすことも出来ずにその声を聞いてたんですよ。


そのうち断片的に聞き取れるようになってきました。

「………な…ぞ…」


夜中に人の部屋に入ってきて一体何を伝えたいんだか知りませんけど
一刻も早く消えてくれないかなあって思って。
でも、男の方を向くのは怖いですから
ベッドの天井の板目を睨みながら耳を澄ましてたんですよ。
そしたら声がだんだん小さくなっていって
部屋に立ち込めていたなんともいえないいやぁな気配も薄れていきましてね。
弟を起こして今あったことを話そうと思ってふっと振り向いたら


まだいるの。


白目の無い真っ黒な眼で屈み込んでじーっとこっちを見ているそいつと眼が合っちゃった。
そこで意識が途切れてしまいまして。
気がついたのは翌朝でした。


でもね


そいつの唇が動いて最後に言った事は忘れられないんですよ。


「おい、わんわんグルメを人間に使うのは効果がないからやめた方がいいぞ」
ってね