吉井id:THORさんとぼんやり会話中、ダイスの話になりました。
吉井さんたらD6あんまり持ってないんですって!
D6いっぱい振るゲーム面白いのにね。
SWもサタスペアリアンロッドも光と闇のレジェンドもみーんなD6。
キングオブダイス。それがD6。






D6だけは常に切らすなって
見張り台にあがって60年のおじいが言ってた。

だから僕もD6は切らしたことがない。
13歳でShadowrunの群れが押し寄せたとき、僕が助かったのはおじいの言うとおりD6をたくさん持っておいたからだ。


3軒向こうのアキヒコはD10しかもってなくてShadowrunに頭をかじられて死んだ。
2ndだったし、サムライがコンバットプール全開で最初の一撃に賭けたら10個じゃまったく効かない。
僕はShadowrunの黒光りする甲殻がアキヒコを押し潰すのを隣の見張り台から見た。



……ちょっと


椎名誠のSFっぽいですね!!


なんでしたっけあれ。


えーと


うーんと


そう!

Add!!


Add! BRD!!


バードさん、Pullしないでください^^;」


「せめてPullerくらいはと思ってwww」



「RNGさんがもう出てるときはマナソングしててください。」


「でもそれだと効率悪いよwww」



「ういw」





「/guild今組んでるBRDマジウンコwwww」







「ミス」






17の夏に天羅万象と戦っておじいは死んだ。



気合ロールが回りすぎたのだ。


おじいは常に60個D6を持っていたけど、それでも足りなかった。
逞しかったおじいの身体は、右手首と足しか残らなかった。
日が暮れてから松明を持った大人達がおじいを外壁の内側まで運び込んできた。
僕はちょうど見張りの時間だったけれど、ムラカミさんが交代してくれて
おじいを迎えにいった。
霊廟には村中の人が集まっていた。
大人達が道を開けてくれたので中に入ると
小さくなってしまったおじいの横にとうちゃんが立っていた。


とうちゃんは黙っておじいの愛用していたD6をひとつ差し出した。


おじいをやった天羅万象は体長15メートルはあったそうだ。
とうちゃん達が見つけたとき、その天羅万象はおじいの遺体のすぐそばで
力尽きていた。
おじいははらわたを貪り食われながらもダイスを振るのを止めなかったらしい。
あの天羅万象の、分厚い毛皮と脂肪を貫いて
おじいのダイスが無数に食い込んでいたそうだ。


「村一番のD6撃ちだったからな。」


そう言ってD6を差し出したとうちゃんの顔は蝋燭に照らされているのに
妙に白茶けて見えた。



とうちゃんはその4年後、隣の集落からの帰りに天羅万象零に襲われて死んだ。
おじいをやった奴の子だった。


僕は喪が明けるとすぐに野に出て
7日7晩かけて追い続け、その天羅万象零をしとめた。
恐ろしく速くて手強い相手だった。D6を余分に持っていなければ
左手の薬指だけではすまなかったと思う。




あれから随分と時間がたった。
今では僕も大人の一員になった。
随分いろんなゲームをしとめた。
昨年子供も生まれた。
村一番だったおじいの孫にふさわしく、村一番のD6撃ちと呼ばれるようになりつつある。


となりの集落からは新しいゲームがうろつき始めたという知らせも届いている。
ダブルクロスとかいうそいつはなんでもかなり手強いらしい。
でも大丈夫だ。
おじいの残してくれたD6。袋一杯のD6があれば。
どんな手強い獲物にでも勝てる。そう思う。


このごろふと空を見上げるとおじいの顔が浮かぶような気がする。
そういえばとうちゃんも死ぬ前にそんなことを言っていた。


見張り台の上から見る空は今日も青い。



おじいとD6 完