アナログデビルサモン

気分が落ち込んだ夜は自分の足元を見つめながら歩いてはいけない。
そんな時は空を見上げるのだ。
晴れていれば星のきらめきが貴方を束の間辛い事から解き放ってくれるし
もっと運が良ければ優しい月の明かりが貴方を慰めてくれるかもしれない。


僕は今日、夜空を見上げて歩きます。
何故ならば

デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団

デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団


をプレイし、
大正時代の東京と、暴走する陸軍と、黒猫を連れた悪魔召喚師の物語に引き込まれて
ついつい夢中になりセーブを怠ったところ、ランダムエンカウントで現れたスサノオ
七支刀を投げつけられて転倒し、起き上がったところをブーメランのように戻ってきた
奇怪な刃に首をかっ飛ばされて死亡、約二時間分のダンジョン探索の成果が噴水の様に
鮮血を吹き上げ、痙攣する胴体を尻目に地面に転がって虚ろな目で僕を見たからです。

ゲェェェェムオォォォバァァァァァ(涙目でコントローラーを投擲)

ギャーッ

ランダムエンカウントスサノオってなんだよそれええええ!
ありえねえええええええ!!

ぬかった!油断したわ!
このゲームは本気だ…ッ!!

思えば道を歩いていたらいきなり女の顔を持った牛にエンカウントして
戦闘中にもかかわらずそいつがこっちの攻撃を全部無効化しながら
不吉な予言を吐き出すだけ吐いて逃げていった時に気が付くべきだった…!


次こそは…、次こそは…!
もっと強い悪魔を!もっと強い悪魔を!

アッパーッム!!!!

魔神とか邪神とか破壊神とか持って来い!あるだけだ!!

魔王だ!大天使でもいいぞ!早くしろ!!!アパーム!!!

どこへいった!?アパァァァーム!!



「のろまは罪ならずだよ、君、まあしかたがないさ!君は短気者だ、ゲームオーバーを我慢できなかったのはわかるよ。あなたも、きっと、何かがかんにさわって、自分をおさえられなかったのですな。」と、ニコージム・フォミッチは愛想のいい顔をラスコーリニコフのほうに向けながら言葉を続けた。
「でもそれは無意味ですよ。はっきり言いますがライドウさんは素性がいい事はもうしぶんないが、ただ、レベルが少々足りなくてねえ。あと30レベルも上げれば好き放題に神でも悪魔でも引っ張り出せるというのに、往々にして我慢が出来なくなり、改造ツールに手を出してはすべてをおじゃんにしてしまうんですからね。」

「きみ、そんなことはぼくはしないさ。」
ラスコーリニコフは少々ふくれっ面になってそれに異議を申し立てたが、図星を指されて口篭もったような口調になってしまうのを抑える事が出来なかった。
なぜならばその時既に、彼の右手は改造コードの載ったサイトを検索するためにマウスに伸びていたからで、そんなことをニコージム・フォミッチが知ったら礼儀正しさを失わない程度に勝ち誇った顔でそらみたことかという表情になるのは間違いなかったからである。


ラスコーリニコフは首をなくしたライドウさんを拾い上げるとさも大事そうにほこりを払うようなしぐさをし、ぎくしゃくと別れの挨拶をすると再びレベル上げをする為に
そそくさとその場を立ち去り、屋根裏にある巣穴へと這い戻っていった。