時系列置き換え戦艦第八早起き丸

夕方痺れる様な眠気を感じてばたりと倒れこんだら早起きしちゃいましたよー。
早ァーッ!早すぎだよおとっつぁん!!
こんなに早く起きてどうすんだい!魚河岸にでも行こうってのかい!
魚河岸のどこが悪いってんだ!魚河岸はなあ…魚河岸はなあ…!
そういえば行った事ねえな。うおがし。
ゆめのくに、なんだろ?テレビでも良くやってるよな。魚河岸に行くとさ。
一般人為は食べられないメニューを売ってる訳よ。
マグロの中落ちを陽子崩壊寸前までのっけた鉄火丼とかさ。
エゾバフンウニを年間摂取許容量限界までのっけたうに丼とかな。
あとアワビにフカヒレにツバメの巣。
トリュフにキャビアにフォアグラ丼とかな。
魚河岸はなあ…夢の国なんだ…。
人が生きているうちに一度は見る青春の幻影。
若さという特権と鎖に繫がれたが故に辿り付く事が出来る近くて遠い国さ。
人間はな、脳で全てを認識する。つまり脳が認識出来ない事は人間には理解できない、
認識できないんだ。もちろん魚河岸の全ては脳で認識できない。
つまり何が言いたいかというと脳は牢獄なんだ!人は鉄格子の隙間から星空を見ている魚河岸なんだよ!もう一人の囚人は鉄火丼を見ていた。
僕はお腹が空いてきたのでとりあえず鉄火丼を見ようと思うんだ。
ほォーら、美味しそうでしょう?これからこれをパクッといっちゃうんですヨォー。
テレビの前の皆様にも食べさせてあげたいなァー!いやぁー、コレを食べられないなんてェ
可哀想だなあ!
ちっ…看守の野郎…今日も新入りをいたぶってやがる…。
あいつは正真正銘最悪のサディストさ。下劣な男だよ。
ああやって毎日食事の時間になると鉄火丼を持ってきて見せびらかしながら食べるんだ。
俺達が魚河岸に死ぬほど憧れてるってしっててな…。
でもちょっとまってくれよ。
確かに鉄火丼はうまい。でもさ、毎日同じ時間に必ず食べたい様なものか?
…いや…出来ればたまにはカツ丼とか親子丼も食べたいな…。
そう考えると、さ。
あいつも可哀想な男なんじゃないのか?
……そうだな…あいつも仕事でやってるんだよな…。
俺、見たことあるんだ。あいつ生まれたばかりの子供が3人居てさ。
休憩時間に写真を取り出して優しい目で見てたよ。
俺が何を見ているんだ?って聞いたら恥ずかしそうに笑ってさ。
故郷に居る恋人の写真だよ。この仕事が終ったら結婚するんだって…
高圧水流のホースで俺をコンクリの床に叩き伏せて散々いたぶったあと、警棒で骨が3箇所折れるまで叩きのめしてから言ってたよ。
この子達のためにも俺は良い人間になりたいんだ…なあ、なれると思うか?ってね。
足は俺の指にかかっていた。魚河岸ピアニストの命というべき俺の指に。

それはもう決定的に狂ってないですか?あと魚河岸ピアニストって何だよ。
ここで!登場人物による物語概念に対しての疑問が差し挟まれました!(はさまれました!)
これは構造主義に対する明確な挑戦であり、野心的な陰謀であります!(あります!)
よって!(よって!)
被告を!
ファントムゾーンに追放する!(ファントムゾーン!ファントムゾーン!)
やめてくれ!ファントムゾーンはイヤだ!
暗いところはイヤだあァァァ!!!(連行)




一人の囚人はファントムゾーンを見ていた。



もう一人の囚人は格子の隙間から、魚河岸を見ていた。