ゆるゆるD&D番外編 

21世紀初頭、人類は未曾有の繁栄を迎えていた。
毎月安定して発売されるサプリメント
追加ルール、追加種族、クラスに呪文にアイテムに!
溢れかえる可能性のエントロピーは宇宙の果てを目指して膨張を始めた。
大量のデータと夢を抱え込んだプレイヤー達は別キャラを作りたくなった。
かくしてゆるゆるD&Dの番外編が始まり、グレイホークシティーに阿鼻叫喚ウィークがやってきた。


■登場人物


◆"Pavement Wind"アッシュ・ワイアー

種族:エルフ 性別:女 属性:真なる中立

クラス:バード3/スワッシュバックラー2 ドレッドパイレーツ3

年齢:128 肌の色:白 瞳の色:深緑 髪の色:赤

そろそろ皆忘れているが、アッシュはバードなのでグレイホークの歴史を語り継ぐために番外編にもそのまま現れた。
同僚が舞台裏に引っ込んでいる間も表舞台に立ち続け、勤続年数の多さを盾にやりたい放題の宴であった。

PLはからす先生


◆ヴァシュマール*1
種族:アアシマール 性別:男 属性:秩序にして善

クラス:クラス:パラディン2、ヘクスブレード4、ビーストマスター1

年齢:22 肌の色:多分白い 瞳の色:夜の様に昏い*2

永劫の夜を歩く呪われし聖騎士。かつて天上の法と正義の名の下に邪まな魔神を討ち果たしたが、定命の身で神を手にかけた呪いを受け
信仰と恩寵を失った。具体的にはマルチクラスしたのでパラディンレベルが上がらなくなった*3。明けぬ夜の底を光を求めて彷徨うその姿はまさにエピックヒーローの名に相応しいが何しろ名前が聖刻1092なので
不穏な気配が立ち上る。

PLは夏瀬マン


◆セレベス
種族:ハーフオーク 性別:男 属性:混沌にして中立
クラス:ファイター5、メナシング・ブルート3

聖カスバート孤児院で育ったシンクロナスの弟分。
立派に起業して今の職業は恐喝屋。
頑張れゴエモンアメリカ時代のマウント斗羽、駿河藩御前試合を満月時に三身合体。
口癖は「お前もこうなりたいか!」暴力の両側面を一人で表現する特殊技能の持ち主。
粗暴な外見に似合わず意外とインテリ疑惑。

PLは吉井さん


◆ロウ・ブライマ*4
種族:エラン 属性:真なる中立 クラス:サイオン8

どこまでもドライなサイオニックマーセナリー。
サイオニックだけを頼りにグレイホークの暗黒街を歩くエゴイスト番外地。
不穏な気配の名前マン2号。
金の切れ目が縁の切れ目を合言葉に、私利私欲のために超能力を使う。
『アンタは何ができるんだい?』の質問に対する返答の変わりに
そこらの酔っ払いを操って自分の頭をカチ割らせたシーンは本編のクライマックス。

PLは山羊さん




「はじまりはいつも酒場だ。」
その言葉を体現するべく、雪の降りしきるグレイホークシティーのスラム街
ブレイド&スターズインの店内にアッシュはいた。
「俺らもこの街じゃ結構顔になってきたしよォー、そろそろナイトウォッチに新メンバーを募集すんのも悪くねえよなァー、あ、俺オレンジな。」
ってシンクロナス君がドリンクバーのお代わりを取りにやらせながら言い出したため、新人募集のチラシを街中にばらまいた。
電信柱とか電話ボックスの内側とかにびっしりと張ったのだ。
無許可で張りまくったので見つかる端から当局に破り取られたが、命を張ってウハウハの大もうけを夢見る若者達は数多い。
腕に覚えのある履歴書がいくつか来たために、その面接をしようとアッシュは待ち構えているのであった。
ちなみにシンクロナス君やムウナは第5話で出てきた「砦」の地下にまた魔物が出たのでぶっ殺しに出かけていない事になった。
「地下4階によォー、モンスター配備センターって書いたドアがあってよォー、中にお宝あるらしいから行って来るわ!」
凄くいい笑顔で死にフラグが立った。
ラダメディウスは自警団本部の2階にでっち上げられた研究室から出てこないので、諦めてアッシュが一人で面接をする。
そういうことになった。


「だーりー」って言いながら機嫌の悪い顔のアッシュが缶チューハイを飲み干して空き缶を後ろに放り投げると
店主のホブスターが「お客様、飲み物類の持ち込みはお断りしておりますので、ご遠慮ください。あとファンタジーだから缶チューハイとかねえよダボハゼが!」
って言った。
すると店の外からずしん、ずしんと足音が聞こえ、酒場が鳴動すると入り口に影が差した。まるで夜のようであった。
うそです、別に夜のようってほどでもなかった。
そして荒々しい足音が聞こえると入り口のドアが開いて、ドタドタと巨漢のハーフオークが入ってきた。

極彩色で生首を染め抜いたど派手な羽織をひっかけ、首にはスパイクドチェインを吊るし、腰には大小二本差とでかい棍棒
とどめに傾者スタイルに突っ立てた頭髪、と絵に描いたようなパンクであった。

今までのパターン上、荒々しくドアを開けてドタドタと入ってきた客は大体アッシュに斬りつけられる運命なのだが、この半オークは恐れる風もなく
悠々と店内を横切るとアッシュの座るテーブルの前に立った。

「シンクロナスをだしな、エルフのちび。俺様の機嫌を損ねないうちにさっさとした方が身のためだぜ。」

「人に物を頼む態度じゃねえぜ、この豚面野郎。家畜小屋は三軒向こうだ。」

お互い第一印象判定には失敗。酒場内に緊迫した空気が立ち込める。

「白ッ首の莫連女がよっく抜かしやがった、命は惜しくねぇようだな?」

「そっちこそ口に気をつけな。後悔した時分にはもう首がねえ。」

お互い獲物に手をかけたまましばし睨み合ったあと、半オークは腰の大段平から手を離して一通の紹介状を取り出した。

「悪かったな、エルフ。俺の名はセレベス。ナスの古馴染みだ。アンタらの助っ人に来た。」
「なんでえ、ナスのダチかよ。ならかまわねえが、そうじゃなかったらナマス切りに刻んでるとこだぜ。」


出会い系茶番の第一幕が終わり、二人は仲良くテーブルに座ると固めの杯を交わして仲良しになった。


間をおいて「次の方どうぞ」ってアッシュが言ったので、ドアが開いて次の面接者が入ってきた。
赤毛で白い顔をした男はほっそりとした体格を軽装の皮鎧に包んで右手には短い槍を携えていた。
この街ではさほど珍しくもない格好であったが、男の青い目には奇妙な自信と力が漲っており
彼が只者ではないことを見るものに告げていた。

「俺の名はロウ・ブライマ。腕の立つ人間を集めていると聞いた。」

「確かにその通りだが、口だけの低脳を雇うつもりはない。アンタは何ができるんだ?」
アッシュが問いただすとロウは傍のテーブルで飲んだくれてるおっさんを指差した。
「おっさんだな。」
「見ていろ。」
ロウがパワーポイントを消費して何かするとおっさんは手に持った酒瓶を自分の頭に叩き付けると昏倒した。
「こんなところだな。」
「よし、採用!」
「ブライマ君、まじいかちくね?サイオニックまっびー!」

茶番の第二幕が終わったので三人がテーブルについてもう一杯飲もうとしていると
またしても入り口の扉がズバターン!って音を立てて蹴りあけられた。
すると完全武装した一団がぞろぞろと店内に入り込んでくると出入り口をふさいだ。
開いたドアの向こう、店の表には窓に鉄格子がはめられた馬車が止まっている。

酔漢の一人が怯えた声で叫ぶ。「し…新兵狩りだァーッ!」
その声で我に返ったかのように一斉に逃げ出そうとする客たちを手当たり次第に棍棒
ぶったたいてとっ捕まえていく男たち。

逃亡を試みた飲み仲間を見舞った恐るべき運命と棍棒を見て静かになった店内に、長い白髪のエルフがスローモーションでカッコよく入ってきた。

均整の取れた美しい容姿をしているが、額から顎にかけて顔の左半分を走る凄まじい傷跡が
彼の表情をゆがめ、常に引きつった奇妙な笑みを浮かべているように見せている。
端が擦り切れてズタボロになったマントをひるがえし、その下にはミスラル製の鎖帷子を着込み
首からはビーズや羽や鴉の頭蓋骨で出来た護符。
その腰には柄にルーン文字がびっしりと刻み込まれた不気味な大剣を下げ、小手を嵌めた手を、その柄頭に乗せていた。
その足元にまとわりつくのは、まるで影のような獣。あまりに暗黒なので隣接されるとSTとACに-2がつきそうなほどであった。


彼にやや遅れて、司祭服を着てコード神の聖印を下げた男走りこんでくると逃げ遅れた酔客達に向かって叫んだ。


「比類なき力持たれしコード神の御名において!コード神殿のチャンピオン、アガメムノン殿がお話になられる!謹聴せよ!!」


「オーク、オーガ、ごろつきや蛮人で構成された山賊王国の軍がシールドランドの国境を越え、リランディ川沿いにニルディブ湖目指して南下を始めた!」


都市国家連合盟約とグレイホーク条約に基づき、これを迎え撃つための討伐軍を編成する!」


「16歳以上の健康な男子は直ちに入隊を志願せよ!」


「これはグレイホークの存亡と名誉を賭けた戦いである!逃げることは許されない!」

問答無用の赤紙配布であった。
憤慨した酔客の一人が立ち上がると叫びをあげる。


「戦なんて冗談じゃねえ!オークにオーガに蛮人だと!?そんなところに行くくらいなら死んだ方がまだマシだぜ!」

するとそれを聞いたエルフ、アガメムノンの顔に浮かんでいた奇妙な笑みがさらに深くなった。
同時に腰の黒い大剣からぶんぶんと唸る様な不気味な音が聞こえ始める。
自分が致命的な即死フラグを立てた事に気がついた客は慌てて発言の取り消しにかかる。


「あ!いや!嘘です!嘘!戦争してえ!オークとかマジムカつきますよねー!」

だが、既に始まっているムービーイベントをキャンセルすることは出来なかった。


「そうか…臆病者め…ならば犬のように死ね!!」
「いや、行きます!戦いますって!ちょっと待て!お前話ぜんぜん聞いてないだろ!」


テンパる酔客。だが、アガメムノンは邪悪な嘲笑と共にプリレンダームービーで大剣を抜き放つ。
夜空の如く煌く刃に血の様に赤いルーン文字が浮かび上がると、剣が喜びに震えるかのように唸りを挙げ、酔客の腹に刃が吸い込まれる。
酔客は信じられない物でも見たような顔で自らの腹部を貫く大剣を見つめると


「ああ…!なんて冷たいんだ!」


と魔剣で殺された時のテンプレートゼリフをはいて死んだ。
アガメムノンの傍らの獣はそれを見て満足そうに喉を鳴らし、目を細める。

「かかれ。」


アガメムノンの合図と同時に背後に控えていた神殿兵達が客達を捕らえて格子の付いた馬車に詰め込み始める。
すると店内にギリギリという不思議な音が流れ始めた。
不思議な音だったので不思議な気持ちになった神殿兵達が音の発生源を探すとそれは
憤怒の形相で奥歯を噛み締めるアッシュの歯軋りの音であった。


「おいこら、このどサンピン!人様の縄張りにズカズカ土足で踏み込んできた挙句にやりたい放題とは、いい度胸じゃねえか!」
叫ぶと同時にソングブレードの鞘を払ってコード神殿強制徴用部隊ご一行様に突きつけるアッシュ。
アガメムノンの黒い魔剣の唸りに負けじと、爆音を轟かせるソングブレード兼平2尺8寸+1の業物、抜けば鳴動、氷の刃。


「女か…黙っていれば放っておいてやったものを…」
アガメムノンが顎をしゃくると5人の兵士が3人を取り囲んだ。
するとセレベスの袂に突っ込まれていた腕が目にも留まらぬ速さで滑り出ると、鎖分銅を繰り出して手近の兵隊の首の骨をへし折った。


「お前らもこうなりたいか!」ここぞとばかりのメナシング恫喝である。


しかし兵隊4人はSTの目が良かったので恐怖状態になったりはせず、依然として4対3の劣勢のまま酒場に殺戮の嵐が吹き荒れようとした時
周囲の光が輝きを失い、世界から音が消えた。


モノクロームで降りしきる雪景色の中を、こちらに歩んでくるものがある。
それは白黒2頭の豹を従え、深い苦悩の影をその顔に落とした一人のアアシマールであった。


色を失い、流れを止めた時間の中で暫し見つめ合うアガメムノンとヴァシュマール。
邪神の呪いか魔剣の加護か、二人のへクスブレードの軌跡がグレイホークシティーで交わることとなった。


「なにか御用かな?ご同輩。」嘲る様に声をかけるアガメムノン


しばし暗い目で店内の様子とアガメムノンを見比べていたヴァシュマールは腰の剣に手をかけながら呟いた。


「神ならぬこの身、詳しい事情は分からないが…どちらがより堕落しているかは私にも理解できたようだ。(ディテクトイービルで)」
コードのチャンピオンを名乗る男から立ち上る邪悪な気配を見据えながらゆっくりと剣を抜くヴァシュマール。
その足元にまとわりつく影のような獣が牙を向いて笑う。


「あの男とお前と、どう違うというのです?彼と貴方と、より堕落しているのは果たしてどちらかしら?」
ヴァシュマールにしか聞き取ることの出来ない声で影の豹が嘲笑った。
その言葉に顔を歪めたヴァシュマールは救いを求めるかの様に白い豹を見たが、純白の獣は悲しげな目で彼を見返すだけだった。


「それでも……私は悪を看過することは出来ない…!」剣を抜き放つと雄たけびを上げながら店内に踊りこむヴァシュマール。





「いくぜっ!シロッ!クロッ!アカシックバスターだ!!!!」


するとヴァシュマールの前方の魔法陣から火の鳥が飛び出して飛行形態に変形したヴァシュマールと一体化すると酒場に突っ込んで
全てを木っ端微塵に粉砕した。


「おいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!ちょっと待て!!!」


「あやまれッ!ヒロイックファンタジーの神様にあやまれよぉォォー―ーッッッ!!!」


「途中までちょっと感心してた自分が恥ずかしい……ッ!!!」


「あー、やっぱこうなりますよねー」


「ブヒヒwwwサーセンwwww方向音痴なんでwwww」


一斉に上がる怨嗟と憤怒の声。
凄い勢いで事故は隠蔽されてなかった事になり、酒場は急ピッチで再建された。
ヴァシュマールは脳内爆弾を埋め込まれ、起爆スイッチは寝言に設定された。
世界率を壊す寝言の発言は本人の死を招くのだ。
ほんとに寝てる時にうっかり夢でも見たら即爆死なのだが、細かいことはこの際気にしないことにした。


改めて剣を抜いたヴァシュマールが雄叫びを上げながらブレイド&スターズインに踊りこむ。


「ヒヒヒ、シュ…シュウの野郎ォォォォーッッ!!!」



轟音と共に吹き飛ぶブレイド&スターズ。
本日2度目の爆散であった。
グレイホークシティーは寝言テロの脅威にさらされていた。

ヴァイツァ・ダストが発動され、ヴァシュマールと酒場が木っ端微塵になって吹き飛んだ事実は木っ端微塵に吹き飛ばされてなかったことになった。
改めて綺麗なヴァシュマールが定位置に配置され、戦闘が再開される。


「どこのどいつか知らないけど、助太刀は歓迎さ!」踊りこんできたヴァシュマールと2頭の豹を見てアッシュが叫び
戦闘は無事再開された。



アッシュが歌い、ブライマのサイオニックが敵の出足をくじき、影の豹に怯んだ相手をヴァシュマールが切り伏せる。
セレベスのスパイクドチェインが唸りを上げ、鼻を砕かれた兵士が呻き声を上げながら床に転がった。
戦闘はPC側有利に運び、瞬く間に二人の敵が切り倒された。
途中、足払いに反撃を受けて転倒するも、そのままコマの様に回転して周囲の敵をなぎ払うセレベス。
その姿はスローモーションとなり、なんか三味線とヒップホップを混ぜたそれっぽいBGMが大音量でガンガン流れた。
そして怒りに燃えるDMが全力強打を宣言してセレベスを攻撃。
振られたダイスの目は20を上にして止まった。
やべっ って顔しながらDMがもう一回ダイスを降ると、出目はまたしても20。


専用BGMにあわせて回転するセレベスに向かってゆっくりと振り下ろされた大剣が激烈ヒットして、セレベスは回転しながら木っ端微塵になった。


包丁人味平の世界である。


卓上に落ちる気まずい沈黙。


「ご…ごめん…。」


「…い…いや、ダイス目はしょうがないですよね、ハハハハ、ハ…」
「事故ですもんね!事故!野良犬にかまれるようなもんですよ。」




「……吉井さんがOPでぶっ散らばるのってこれで2回目ですね。」



「……。」



「…さっ!こいつらぶっ殺して神殿に行こうか!!!」
「お…おう!」



「また……借金生活か……。」
「それを、言うなよおぉぉぉぉぉぉぉォォ!!」



セレベスの血を吸って真っ赤な銭の花が咲いた店内で自暴自棄になった3人が大暴れすると、残りの敵も制圧された。
部下が切り倒されるのを黙ってみていたアガメムノンだったが、最後の一人が倒れると邪悪な笑みを顔に浮かべながら黒い剣に手をかけた。


「いい腕だ…兵隊にも欲しいが……切りつけてどんな悲鳴を上げるのか試してみたくもあるな。」


アガメムノンの獣が喉を鳴らす。
一触即発の雰囲気に凍りつくブレイド&スターズ。
連続戦闘イベントの火蓋が切って落とされる寸前、ラッパの音が響き渡り、馬に乗った兵士達が店の前に現れた。
見事な鎧に身を包み、髪と髭を油で撫で付けた中年の男が眠たそうな顔をしながら入ってくると、店内の惨状を見渡して呆れたように眉を上げる。


「そこまでだ。これ以上の騒乱は許さん。」
「俺はグレイホーク市民軍第8連隊所属 特務第9小隊 隊長 ヴァンサン・ヴノワだ。」
アガメムノン!幾ら市当局の許可を得たからといってところかまわず市民を捕まえて回っていい訳ではないぞ!」




アガメムノンはにやつくばかりで答えず、代わりにコードの司祭が勢い込んでわめき始める。


「これは聖戦ですぞ!コード神より神託が告げられたのです!」
「その証拠に我が主コードは御使いをだされ、もっとも優れし神殿のチャンピオンに権能の剣を与えられた!」
「グレイホーク評議会はコード神の決定に異議を唱えられるというのか!?」


「んなこたあ、どうでもいい。この辺りは俺の割り当て区域で、そこで好き勝手やられて稼働率を下げたくないだけだ。」
「今すぐとッ捕まえた酔っ払いどもを解放して、神殿区に戻るんだな。」


司祭は顔を真っ赤にして抗議の声を上げようとするが次の瞬間、先ほどの騒動で割れた窓から一本の矢が飛び込んでくると司祭の足元に突き立った。


「それとも…ここで俺たち第九小隊とやりあうつもりか?」


その言葉を待っていたかのように、幾条もの赤い光が窓の外から差し込んで埃の舞う店内をよぎった。
赤い光点がゆっくりと移動すると司祭とアガメムノンに集中する。


自分の置かれた状況に気がついた司祭は先ほどとは打って変わって真っ青になり、うろたえた様子でアガメムノンを振り返る。


「ご大層なことだが……ファンタジー世界にレーザーサイトとかないと思うんだ。」
額に集中する光点に微塵も動揺することなくヴノワに言い放つアガメムノン
その一言を聞いたレーザーサイトの赤い光点達は、来た時と同じ道を通って恥ずかしそうに家に帰っていった。


「だが、市当局を相手に喧嘩をするつもりはない、部隊に組み込めそうな人員の当ては他にもあるしな。」
邪悪な笑みを浮かべたアガメムノンは剣の柄から手を離すとマントの裾をひるがえして扉を出て行った。
後には怒った顔の司祭が続き、出口で振り向くと「コードさんのばちィ、かぶんぞ!」って叫ぶとドアをばったんと閉めた。


「さて、今度はお前達だ。」
残された4人に向かって振り向くヴノワ隊長。
「アタシ達ァ、被害者だよ!ヴノワ隊長!おとなしく飲んでるとこに奴が殴りこんできたんだ。」
すばやく刀を納めながら叫ぶアッシュ。練達の変わり身だ。


「お前達の噂は聞いてる、最近随分とスラム街で暴れてるそうじゃないか。」
「そいつは誤解があるねえ、シンクロナスの方針でアタシ等はストリートの治安を守ってるだけだよ?」
言い返すアッシュ。
「住民どもの評判は悪くないらしいが、前任者がモレドだ。あのバカと比べりゃ梅毒にかかったトロールだってマシだろう。」
「カシウス評議員の件は聞いている。議員の覚えもいいことだ。スラムから出てこない限りは見過ごすが、一歩でも踏み出したら妙な真似はするな。」
ヴノワ隊長はじろりと睨みつけると釘を刺して帰っていった。
「……ちっ、いけ好かない野郎だね。」吐き捨てるアッシュ。



「この部隊は当局に目をつけられているのか…契約料金は割り増しで払ってもらうぞ。」
主のいなくなった酒瓶をあおりながら呟くブライマ。
「そっちのアンタもご同業か?金はちゃんと請求した方がいいぞ。」
またしても血みどろになった店内を昏い目で眺めていたヴァシュマールは首を振って答える。
「いや、これもフェイトの導きだ。ならば私に課せられた贖罪のひとつ、代価は要求しない。」
付き合ってられん という顔をして天をあおぐブライマを尻目にカウンターの裏からボディーバッグを取り出すアッシュ
「ホラ!くっちゃべってないで手を貸しな!こいつを神殿に運ぶよ!そっちのアンタも物のついでだ!ついてきな!」



3人は凄く迷惑そうな顔の店主ホブスターをガン無視しながらぶっちらばったセレベスを回収すると、いそいそと聖カスバード神殿へと向かった。
街に降り積もった真っ白な雪の上に、点々と血の跡が残った。


「あんたまあ、なんちゅう姿になって…。」
育ての親のグランマさん(聖カスバート神殿在住)が嘆く中、セレベスの蘇生儀式が粛々ととり行われていた。
ささやき…詠唱…念動爆砕剣!!! アンタ少し黙ってろよ!!! フヒヒ、サーセンwwww


軽やかな茶番と共にセレベスは繋ぎ合わさって再び生命活動を始めた。これ以降、この固体をセレベスRと呼称する!しません。


「フゥ、生きた心地がしなかったぜ…!」
地獄の底から戻ってきたセレベスの第一声にみんなそれはそうだろう、と思ったが口にはせずに祝福の言葉をかけた。


「しかし、雇われたばかりの傭兵をここまで手厚く蘇生してくれるとは…。」
感慨深げに呟くブライマ。


「ナイトウォッチの一員となったからにはもうファミリーだからね。しっかりケツもってやれっていうのがナスの信条なのさ。」
「なるほど、ここまでの福利厚生付ならば安心して金を稼がせてもらえそうだ。」
爽やかな笑みを浮かべるブライマから素早く目をそらすアッシュ。
セレベスの再生費用でグレイホークナイトウォッチの金庫はほぼ空っぽのエンプティーであった。


「この秘密は誰にも明かさない…!」団の帳簿を握り締めつつ誓うアッシュ。
銭の花は真っ白だが、根っこは血のように赤いのだ。
早急にどうにかしないとブライマ一人分の給金すら払えない などとは口が裂けてもいえなかった。


がまぐちの中身を人差し指でまさぐるアッシュの背中をよそにセレベス復活祭をとりおこなう一同。
しかし例によって駆け込んできたナイトウォッチ団員Aの悲痛な叫びによって祭りは順延となった。



「出入りでヤサがえらいことになってます!」



血相を変えた一同が自警団本部に戻ってみると、まるで強制徴用部隊が自警団を襲って構成員達を連れ去ったような荒れ放題のありさまであった。
「オレらがだべってたら、コード神殿の連中が来て、徴兵するっていうから死んだ方がましだって言ったら剣でブスッと刺されてさ・・・寒いっていって死んで残りの連中は連れて行かれました!」



「あのど腐れエルフが舐めた真似しやがって!」憤激するアッシュ・ザ・エルフを尻目に一人うんうんと頷くブライマ。
「第三勢力を確認したら速やかに転戦して敵の拠点をたたく、か。見事な戦術だ。」
「どっちの味方なんだよおっめぇはよぉぉぉ!」


荒れ果てた室内でダバダバ騒いでいると、2階からラダメディウスが降りてきて「騒がしいなあ。」って言いました。
おっめ、いるんなら応戦しろよぉォォ!と突っ込む一同に対して
「ごめwwwwwネトゲしてたwwwww」と言い放つラダメディウス。



直後にDMが火刑台に送られたのでNPCラダメディウスはまともにしゃべるようになり、秘術呪文の研究に夢中だったので騒ぎに気がつかなかったよ、メンゴメンゴって言った。
一同は、何でお前無事なんだよ!、グルか!グルなのか!って一通り文句を言ってから「まあ、NPCからしょうがないよな。」と落ち着いた。
もはやどこに向かって放たれたジャブなのかすら分からない。悪意と暴力が横行する混沌の時代であった。


「貴方は高位の魔道師らしい…この身にかけられた呪いについてなにか助力を頂けないだろうか。」


思いつめた顔でラダメディウスを見ていたヴァシュマールが口を開いた。
アアシマールの方を振り向いて、その顔に視線を合わせたまま動かなくなるラダメディウス。
見詰め合う二人が奇妙に似かよっている事に周囲の者達は気がついた。
そう、まるで一人の英雄の別側面が同時に顕現しているような。
両方とも夏瀬マンのキャラなので当たり前なのだが、勢い余ったエターナルチャンピオンごっこであった。
後日、当局の取調べに対してDMは「ついむしゃくしゃしてやってしまった。」と供述している。
ヒロイックファンタジープレーンから超人波動を受け取ってムクムク膨らんだラダメディウスは
しばらくヴァシュマールを見つめるとやがて口を開いた。



「奇妙な影を引きずっているな…(へクスブレードだから)」
「だが、その呪いの解き方は私には分からない…(クレリックじゃないから)
「フヒヒwwwwサーセンwwwww(力に慣れなくてすまない…)」



最後の一言でバランスを崩し、コーナーでクラッシュするラダメディウス。
消火器を持ったスタッフが駆け寄り、懸命の救助作業が行われた。


「まあ、ぶっちゃけ呪い解けちゃうとキャラ立ちが無くなるんで困るんですけどね!フヒヒヒ」
続いてコーナーに入ったヴァシュマールもスピンを起こして追突。死傷者多数の茶番大惨事がおきた。


濛々と黒煙を上げ続けた火災も数時間後にはようやく鎮火され、一同はお礼参りの計画を練り始めた。



復讐という料理は相手の弱みをつかむ下ごしらえの丁寧さが肝。昔の人はそれは丁寧に相手の弱みをつかんだものです。
でも、最近はそんな丁寧な仕事をするアヴェンジャーもいなくなりましたねえ、コレも時代の流れなんでしょうが、寂しい限りですね。


この道40年の老職人が現れると江戸前の仕事について語り、みんなは「もっともだ」と思ったので、アガメムノンとコード神殿について
丁寧なリサーチをした。
出てきた情報を整理するとこういうことになった。


1.アガメムノンはコード信者の間でも名高き凄腕の戦士。でも、ちょっといい気になりすぎて自慢だった顔を決闘相手に刻まれてから様子が変だよ。


2..コード神殿には最近神の使いと名乗る天使が降りてきてアガメムノンに黒い剣を渡したよ。でも天使さまが来てからやることなすこと暴走し気味だよ。


3.徴兵された人の一部はどうもアイウーズ帝国の奴隷商人に売り渡されている気配があるよ。


4.天使そっくりに化けて人をたぶらかす悪魔がいるよ。名前はエリニュスだよ。


5.特務第9小隊は物凄く有能なはみ出し者ばっかりが集まったあんまり敵にしたくない部隊だよ。市街で暴れると黙っていないよ。



「わかっちゃいたけど、露骨に悪い奴だなぁ…。」呆れた顔で呟くセレベス。
「正面からコード神殿に襲撃をかけてもいいのですが、特務第9小隊を敵に回すと面倒ですね。」
「あいつ等も丸め込んじまえばいいんじゃねえの?バード様の説得技能が光って唸るぜ!」


と、ぎらついた目で第9小隊の屯所に交渉に赴くアッシュ。
「あいつ等悪い奴だからぶっころしてもいいよな!」と流麗な語りと聞き惚れる美声でヴァンサン・ヴノワ隊長に畳み掛ける。
「グレイホークシティーは法治国家だ。駄目に決まってんだろ。」
それまで茫洋とした顔つきだった隊長は突然、剃刀後藤ばりの鋭さを見せて高達成値で交渉を跳ね返した。
「神殿区に足を踏み入れるのを見つけたら、、俺達が相手になるぞ。」有能すぎて左遷された隊長テンプレートを額に輝かせつつ最終宣告するヴノワさん。
「くそ!こいつマーシャルじゃねえか!交渉でこんなの相手に出来るか!!バーバーカ!」
絶望した顔でおしりペンペンしつつアジトに帰ってくるアッシュ。



「と、いうわけで駄目だったんだけどどうしよう?」
珍しく弱気のアッシュにアチャーって顔になった一同。



「……まてよ?あのオッサンは神殿区にいるところを見つけたら、って言ったんだよな?」急に立ち上がって壁に貼られた市街地図と睨めっこを始めるセレベス。
「それがどうかしたかよ?」
「あれだけ強そうなNPCがコード神殿の異常に気づいてないはずがない、逆に言えば見つからない範囲ならうるさくは口出ししてこないんじゃねえか?」
怪訝な顔の一同の前に街路図を広げつつハーフオークはメタっぽい解説を始めた。
「下水道や地下通路の類を通って直接神殿に乗り込んじまえば、やっこさん達が来る頃には全部片がついてるって寸法よ。」ずるそうに牙を見せてにやりと笑うセレベス。
「おい、こいつハーフオークだと思ったらインテリだぞ!」
「見掛けによらねえなあ…」
割と率直かつ礼儀をわきまえない仲間達の寸評にセレベスはちょっと悲しそうな顔になった。
「俺はハーフヒューマンでもあるんだぜ…。」


「そうと決まったら即行動に移ろう。用兵は神速をもってよしとする、だ。」
「よっしゃ、出入りの準備だ!」
「悪を放置するわけには行かないな。」
皆は悲しそうなセレベスを持ち上げるとそのまま下水道に潜っていった。




どうどうと音を立てて流れる地下水道を脇に見つつ、既に市当局からも忘れられた通路を辿って神殿区に向かうナイトウォッチ一同。
しかし、こんなナイスバケーションで遭遇がないはずもなく、無論の事エンカウントは巻き起こるのだ。



いつから使われていないのか判らないほどボロッちくなった扉を潜って明かりを掲げた途端に視界が真っ白になり、一同は巨大な蜘蛛の巣の真っ只中にいることに気がつく。
「これ…蜘蛛の巣だよなあ…」
「どう考えても蜘蛛出てくるよなあ…」
「俺、蜘蛛嫌いなんだよね。」


などと不安げな顔で一同が囁き交わしていると松明の明かりに照らされて、通路の先でなにか巨大な影がむくむくと蠢くのが見えた。
するとタワシをこすり合わせるようなわしわしという音に続いてギチギチと牙を噛み鳴らす嫌サウンドが流れて道の向こうから小屋ほどもある大きさの巨大な蜘蛛が現れた。
数世紀にわたってグレイホークシティの地下道に巣食う忌まわしき主。その前身は安住の地と定めた一枝が嵐に飛ばされ、地下水道にまで流された哀れな1匹の小蜘蛛であったがそれはまた別の話、また別のときに話そう。
何喰ってここまででかくなったか?「多分コボルトとかじゃね?」グレイホークの地下にコボルトいるのか?「通販で買ったンじゃね?」



嫌悪のあまり呻き声を上げながら武器を抜き放つ一行。
狭い地下通路いっぱいに巨大な蜘蛛の影がのしかかり、しっちゃかめっちゃかの大乱闘が起きた。
途中アッシュが糸でグルグル巻きにされて危うく蜘蛛の毒牙に掛かりそうになったが、敵は所詮1匹。
ロウのエナジースタンに撃たれてつかの間動きを止めた蜘蛛に向かってエンラージしたセレベスの鎖が問答無用に振り下ろされる。
火力の一点集中を受けた蜘蛛はまもなくピギーって叫ぶとひっくり返り、巨大な足をわしわしと動かしながら縮み上がって動かなくなった。



「ねえねえ、蜘蛛ってチョコレートの味がするんだよ。」
「だったらてめえが喰えよ糞野郎。」


パーティーの絆も深まって一石二鳥。一同はさらに地下を進む。
水路を抜け、梯子を登り、DDOライクなスイッチを入れたり切ったりのギミックが演出だけされ、道の半ばも過ぎただろうという辺りで
天井の低い通路に怪しげな音が鳴り響き始めた。ぴょろろろって。
往年の円谷特撮チックなSEにモンスターの接近を予感して構えるナイトウォッチ一行。
油断なくスパイクドチェインを手繰りながら周囲に目を配っていたセレベスがふと視線を下にやると、前方の床石がめこめこと剥がれて地面が盛り上がった。
盛り上がったかと思うとフラッシュを焚いた様な怪しげな光が2度、3度と閃き、皆は思わず科学特捜隊に通報したくなったが我慢してムービーシーンを飛ばすべく○ボタンを連打した。
すると地面のそこから「不確定名:こげ茶色の図体のでかい男」が這い出してきた。
こげ茶色の図体のでかい男は複眼を持ち、大きな類人猿とカブトムシのあいのこのようなLサイズクリーチャーであった。



「でえぇぇーったぁよおぉぉぉーぉ、アンバアアァー」
げんなり顔で呻くアッシュ。


「いいえ、不確定名:こげ茶色の図体のでかい男です」


「アンバーハルクですか、アレは強いんですよね。」


「アンバァァァァァー、アーンバァァァーマッジ勘弁。アーンバァー。」


「いいえ、不確定名:こげ茶色の図体のでかい男です。」


「アンバーハルクが相手となると凝視攻撃がやっかいだな。」


不確定名:こげ茶色の図体のでかい男はそんなことしません!いや、するかもしれないけど知識判定しろよォォォ!!!」






やっぱりアンバーハルクだった。





1ターン目。アンバーハルクがぴょろろろって音を出して一同を睨んだらセレベスが挙動不審になってその場に立ち竦んだ。
アッシュ、2頭の豹を伴ったヴァシュマールは抜刀してアンバーハルクに斬りかかるが分厚い甲殻に阻まれて有効打が出ない。
ロウはセレベスを遮蔽にしてアンバーハルクの突進に警戒しつつリソースを温存すべく待機。


2ターン目。アンバーハルクの凝視でおつむがイカレたセレベスが振り向きざまにスパイクドチェインでロウの横っ面を思い切り張り飛ばした。
物凄い目でセレベスを睨みつけるロウ。殴った本人は会心の手応えを反芻している。
アッシュとヴァシュマールはうわぁ…って顔になり、お互いの顔を見合わせた後で黙ってアンバーハルクを殴った。


3ターン目。アッシュのソングブレードがアンバーハルクの巨大な顎を掻い潜って口の中に突き刺さり、動きが止まった怪物の首をヴァシュマールの剣が撥ね飛ばして戦闘は終了した。



「……片付いたようだな。あれ、ブライマ君血ィでてるよ?ポーション飲む?」
「ありがとよ、この糞野郎!」
「ブヒヒ、サーセンwwww」


地下の魔物を屠り進む一行の前に、光が見えてきた。長い長い道も終わりに差し掛かったのだ。
下水道の出口を抜けると、夜の底が白くなった。
音もなく降り積もる雪が、グレイホークの神々の神殿が立ち並ぶ街区を白く塗りつぶしていく。
「天は俺達の味方だな…」
白い息を吐きながらセレベスが呟いた。
「ァん?」
鼻の頭を赤くしたアッシュが両手を擦り合わせながら振り向く。
「雪が足音を、痕跡を消してくれる。まず気づかれることはあるまい。」
「なかなか切れるじゃないか、ハーフオーク。」
「さっきも言いましたけど、俺はハーフヒューマンでもありますから。な?」



白く閉ざされた街路に人影はない。
雪を踏みしめ、足早に走る4人。ただ、足跡だけが残され、その痕跡も降り積もる雪に薄れていく。
どこか空の高いところで甲高い叫び声がし、羽音が響いた。



見上げれば遥か上空を一騎のグリフォンが旋回している。
騎手が掲げるのは第九小隊の隊旗。
「まずいな…第九小隊のレコンか。捕捉されない内に先を急ごう。」


「この雪だ。光学迷彩は効果が薄いぞ。」


「総員、電脳を自閉症モードへ。」


「寝言はいいから先行けよ、道詰まってんだよ。」


「じゃあ、おしくらまんじゅうで暖まっていくか!」


「そんなに寒いんならエナジースタンで暖めて差し上げましょうか」


「げえっ お礼参りだ!」


「まあ、パワーポイント勿体無いんでそんなこと絶対しませんけどね!」


「だから早く行けよおおおおおお」



だばだばしつつ雪中行軍する一行の眼前に聳え立つコード神殿。
周囲の神殿を威圧するかのような異様な雰囲気。邪悪マジ邪悪。
ヴァシュマールの白豹が鼻に皺を寄せて唸る。


「なんだ、アンタのペットはコードさんがお嫌いかい?」


「この豹は腐敗と邪悪の臭いを嗅ぎ分ける。ここがコード神殿だとしても、十中八九コード神の目は塞がれている。」


「では、遠慮なくやれるということだな。」指先に小さな稲妻を閃かせながらロウが呟いた。


「準備が出来次第突入するよ、覚悟はいいかい?」


アッシュの言葉を合図に一斉にポーションベルトからドーピングアイテムを摂取する一行。
パンッパンに膨らむまでBuffったナイトウォッチはフルスロットルで神殿に突入する。
大理石と黒曜石で市松模様に彩られ、白亜の円柱が立ち並ぶ廊下を一気に駆け抜け
出会い頭に驚き、叫ぼうとする太った神官をノックアウトし、巨大な鉄扉を蹴り開けておどりこんだ先は聖堂であった。



高い天井から見下ろすような巨大なコード神の像、壁一面に張り巡らされたオルガンのパイプ、祭壇に燃え上がる聖火。
だが見よ。神像の目は聖堂で行われる冒涜を見ることが出来ぬよう抉られ、祭壇は黒い炎で汚され
善と力の御業を高らかに歌い上げていたパイプオルガンからは、聞くものの官能をくすぐる様な奇妙に怠惰な調べが鳴り響いていた。


祭壇の後ろ、オルガンの演奏席には翼を持った美しい女が座り、巨大な鍵盤を操っている。
その脇に控えるように魔剣を携え、黒い獣を従えたアガメムノン立っていた。


ひとしきり演奏を終えた女はゆっくりと立ち上がり、一行へ振り向くと口を開いた。


「ようこそ、正義と力の殿堂へ。ここは力の神の膝元。貴方がたのような強き戦士は神の名の元にあらゆる行いに赦しを得ます。さあ、跪いて祝福を受けなさい。汝の欲することを成せ!」


天界の竪琴のように美しく、鈴の様に麗しく響く声だった。
だが、その美しい声はMAXボリュームで鳴り響くドスの効いた重低音にかき消された。


「この期に及んでグダグダ言い抜けようなんざあ、おつむの程度が知れるよ!地獄の売女が!」


ソングブレードを抜き放ったアッシュが鮫の様に笑いながら叫ぶ。


「貴様…御使い様を侮辱するか!」


「お待ちなさい、チャンピオンよ。」


剣の柄に手をかけて前に出ようとするアガメムノンを留めると、女は俯き、ややあって顔を上げた。
すると女の足元から緑色の炎が噴出し、割と清らか味気だったコスチュームが見る見るレザーとかハーネスとか鎖とかがジャラジャラついた不道徳な代物に変化し
純白の翼は赤黒い猛禽の物へと変化した。


「言いたい放題言ってくれるねえ……この、エルフのアバズレがあああああ!!!」


マジ切れして正体露呈のエリニュス


「ハハハハ!あっという間にお里が知れたねえ、地獄のアバズレが!」悪魔が正体を現したのに嘲弄フェイズを続行するアッシュ。本日のお前が言うな大賞。
「OK、現行犯だ。神殿は悪魔の手に落ちてる。」
大義名分の確保は完了。作戦は掃討フェイズに入る。」アッシュの暴言はフィルタ登録済みの一行は気にしない。


「掃討か…簡単に言ってくれるものだな。」
傷跡に歪んだ顔を更に歪ませて笑いながらアガメムノンが剣を抜き放つ。
鞘から解き放たれるなり、漆黒の刀身を持つその剣はまるで意思を持つかのようにまた狂おしく身を捩るように走り、湾岸を時速250キロで加速していく。

「稀に見る良い流れだ…。」


「ナス君!あいつ切れてるよ…。」


「ああ、良い感じだ。切れてるね…・。」


「どうだ、ヴァシュマール。あいつと走りたいか?」


「時速300キロの公道バトル…決して正当化することの出来ない違法戦闘行為か…」


「アタシのソングブレードとどっちが疾いか…試してみたいと思ってたよ…。」
湾岸の女帝王、腹黒い怪鳥アッシュ・ザ・ブラックバードが空冷式ソングブレードを吹かす。


突如始まった湾岸ミッドナイトごっこについていけないエリニュス
ひとしきりgdgdを堪能したのでみんなはお話を進めることにしました。


「一つ間違えば悪魔の側に立っていたのは私だったかもしれない…。」
小昏い眼でアガメムノンを見つめながら呪われたアアシマールが呟く。
gdgd空間から急に繰り出されたエピック演出に顎を打ち抜かれたエリニュスは一瞬ふらついたが、すぐにファイティングポーズを取ると
怒り出した。


「いい気になってンじゃないよぉォォ!!」
叫びと共に振られるイニシアティブ。
そのまま機先を制したエリニュスは指先で空中に炎の門を描き出す。


フルボッコにして豚の餌にしてやンよ!」
すると門の向こうから1d4体のビアデッドデビルが招来された。
デビル招来パワーである。
DMが黒い念を込めてダイス振ったら4体増援がきた。キャッキャするDM。
いきなり形勢不利になるナイトウォッチ。


怯んだ一行を叱咤するかの如く、ヴァシュマールの傍らに控えていた白い豹が一声吼えるとアガメムノンに飛び掛った。
「馬鹿め!」豹の飛び掛りを耐え切ったアガメムノンが叫ぶと黒い剣が唸り、白豹の体を地獄の刃が貫いた。
聞いた者が一生忘れることの出来ない悲痛な声を上げて倒れる白豹。
黒い剣の刀身には赤くルーンが浮かび上がり、脈動するかの様に光を放つ。
そして身を捩りながら加速して稀に見る良い流れ。


「ああッッシロォォーッ!」


「ほんとにその名前なのかよォォォ!」


「だって、白い猫だったらシロじゃん!うおおおお、シュウゥゥゥ!」
ヴァシュマールが寝言を口走った瞬間に脳皮質爆弾がNGワードを認識して起爆。ヴァシュマールの頭部も木っ端微塵に吹っ飛んだので
リセットボタンが押され、ここまでのムービーシーンがSkipされて戦闘は継続された。
押され過ぎでリセットボタンは本体にめりこみ気味だ。


「この状況で寝言とは良い度胸だ!」
プンスカしながらデビルチームが押せ押せに攻撃すると、流石にナイトウォッチも劣勢に立たされた。
いつもと構成が違うので火力が低めなのである。
これはまずい。PLとDM双方が冷や汗を滲ませて全滅の気配を嗅ぎ取った。
張り詰めた雰囲気が神殿に漂う。


すると殿様がポップアップして宿直の家臣を呼びつけた。
「誰か!誰かあれ!」


「は、お召しでございますか!」


「ラダメディウスを!ラダメディウスを呼べい!」


「かしこまりましてございます!」


家来が足音も高らかに廊下を走り去っていくとPOP条件が整った一休さんが現出した。


「殿様、まずは虎を屏風から追い出してくださいまし。」


「うむ、ではそのようにせよ。」


殿様が促すと屏風の中から出てきたグラスが一口に一休さんを飲み込んでしまった。
あとから出てきたムウナは「余計なことを言わなければ長生きできたろうに・・・」と悲しそうな顔で言った。


茶番の終了後にさらに茶番を重ねる2番出汁追い茶番である。
風味豊かなエフェクトと共にヴァシュマール、ロウが舞台裏に引っ込むと、そこにはムウナとラダメディウスが立っていた。
華麗なるPCチェンジに「お見事!」の掛け声が飛ぶ。飛ばしたのはシグルイっぽい武士。役目を済ませると背景に溶け込んで消えた。*5


「新手が来たか…しかし誰が来ようが同じことだ!」血に狂ったアガメムノンが高らかに宣言した。
宣言したその足元で威力最大強化ファイアボールが炸裂し、炎に包まれるアガメムノン


「まだだ!この程度ではまだ俺を倒すことは出来んぞ!飢えに雄叫び、鉄を貫き、断ち割られし頭蓋に歌い、血潮に渇きを癒す!我と剣とは永劫に戦うのだ!」


HPの大半を削られたアガメムノンはちょっと泣きそうになったのでポール・アンダースンごっこをして士気を高めた。
そしたらグラスが一気に突っ込んできて左右の爪でアガメムノンフルボッコにしたので非常に高い士気を保ったまま、アガメムノンのHPはマイナスになり
戦闘不能になった。戦闘不能になったアガメムノンは最後に残った力を振り絞り、震える手で剣を振り上げると全力でグラスに向かって振り下ろしたが
その刃はグラスに当たることなく床に振り下ろされた。奇妙に澄んだ音を立てて床から跳ね返った刃は主の手を離れ、その胸元に深々と突き刺さり、彼の命を奪った。
アガメムノンは「さ…寒い…。」というとこときれて動かなくなった。


「魔剣に魅入られた者の末路か…哀れなものだ。」許容量ギリギリの魔力を放出した為、緊急冷却モードに入って白煙を上げる増幅杖を手に、ラダメディウスが呟く。


残ったビアデッドデビルはムウナとアッシュの手で手際よく片付けられ
その背後で、大聖堂の隅に追い詰められたエリニュスが最後の時を迎えようとしていた。
ゴッドオブウォー張りに振り回されたセレベスの全力強打スパイクドチェーンがクリーンヒット。空中に羽毛が舞い上がると、女悪魔は木っ端微塵になって九層地獄に送り返された。


DMはPC交代とか言わなきゃ良かった…って顔になりながら戦闘の終了を宣言した。
悪魔が滅ぶと同時にステージ背景で虚ろな目をしてろくでもない響きの連祷を歌っていたコードの神官達が正気に戻り、聖堂はざわざわし始めた。
「これは一体どうした事だ。」「我等は何を神殿に引き入れたのだ?」「おお神よ、何たる事だ!」


悲痛な嘆きと怒りの声が聖堂に満ちると声を聞きつけて神が来た。


「おっめーらよぉ、ぶったるんでっからこういう事になんだよ!」


神仕様のセルシオから降りた瞬間に火のついたタバコを叩きつけつつ叫ぶコードさん。


「オス!サーセン!」


「誰だおめえ?あ、俺の神像の目、今壊れてて見えねっからさ。」


「オス!コード神殿助祭であります!」


名乗った瞬間助祭の顔面にバットがめり込んだ。コードさんがフルスイングしたのだ。
もんどりうって地面に転がり、呻き声一つあげない助祭
神官一同は凍りついた。


「なーんで、神が直にヤキ入れてやろうってのに最初に出てくんのが助祭なんだよ!」


「こーいう時はよぉ、上のモンが率先して出るモンだろうが!男気みせてよぉ!その男気に下のモンはついてくんだろうがよ!」


「お、オス!大司祭であります!!」
名乗った瞬間大司祭の後頭部にバットが振り下ろされた。倒れ伏したその背中に更にバットの洗礼は続く。


「下のモンが一発なら上のモンは10発はもらわねえとケジメがつかねえだろが!!」
「次はどいつだ?あ!?言っとくけど全員ヤキいれっからな!後になるほど重くなるから!」


「俺が定命だった頃はよォ!一人で1000人に突っ込んでいくとか普通だったんだよ!」
「おめえら不甲斐なさ過ぎなんだよぉ!デビルの一匹程度によォ!」


凄惨なリンチスペクタクルが繰り広げられ、神殿は正義とメガバイオレンスに満ちた。
一通りヤキを入れ終わったコードさんが汗をぬぐって振り返るとセレベスが「それどうみても悪。」と書いたカンペを提示した。
慌てたDMがPHBを良く見るとコードさんは混沌にして善の神であったので、慌てて倒れた神官達を抱き起こし


「おお我が子等よ、痛みの時は去った。」と言った。


そこまで言ってから「いや、そもそも神とか自分で来ないから」と正気に返ったコードさんはゴッドパワーで時間を巻き戻すとセルシオに乗って天界に帰った。


なので正気に返った神官達が痛む頭を抑えながら起き上がろうとしているのを背後に、アガメムノンの遺体に突き刺さった剣に手を伸ばしながらアッシュが呟いた。


「しっかし、見るからに金になりそうな剣だぜ。」
必要経費とか公共料金の引き落しとかを計算しながらアッシュが剣の柄に手を掛けると、凄い難易度の意思STが要求され
そんなもん成功するわけねえだろ!って叫んだ瞬間、握った手ごと剣が跳ね上がり、その辺りにいた助祭の腹に刃が突き刺さった。
バットで顔面をジャストミートされた挙句に魔剣を突き込まれた助祭は「ああ…なんて冷たいんだ…!」というと死んだ。
血に飢えた魔剣マジやべーぜ!の演出であった。
意図せぬ殺人にアッシュが青くなると、すかさずロウがサイオニックリヴィヴィファイを使って助祭の命が魔剣に吸い取られる前に蘇生した。
演出事故からの華麗な救出である。*6


「なんっちゅーやべえ剣だ!」
「これは売り飛ばすのも無理なんじゃ…」
「どっか火山の火口に捨てるしか!」
ざわざわする一行を尻目に、ゆっくりと剣に近づくヴァシュマール。
「この剣もその男も、目的を持って生まれてきた物だったのだろうに…何がそれをここまで黒く歪めたのか…。」


痛ましげにアガメムノンの遺体を見下ろしながら、魔剣の柄を握るアアシマール。
またしても要求されるST。しかし血を啜って若干下がった難易度に加えてヴァシュマールのSTは実に高い。
見事成功するとDVDドライブがブーンと音を立ててムービーが始まった。


どこともしれぬ漆黒の闇の奥。
赤い炎の瞬きに合わせて槌音が響き渡る。
「ゆるさん!ゆるさんぞぉぉー!白面!!!」


みんなが「えぇー?」って顔になったのでせりふが変更された。


「ゆるさん!ゆるさんぞぉぉー!デビルとかデーモン!」
なんか凄い顔したジンがガッツンガッツンと剣をぶっ叩いている。
「法も、混沌も、善も悪も全てもろともに切り伏せろ!」
「黒い刃は渇いておるぞ!この世の終わりは近づいている!」


もうムアコックだかポール・アンダースンだか うしおととら だかすら良くわかんない大惨事に「見なきゃ良かった…」って顔になる一同。


ムービーシーンが終わると、剣の意思がヴァシュマールに魔剣の銘を告げた。
その名はブラックレイザー。遠い昔にこの領域を去った魔神が残した魂を啜る魔剣であった。


パキパキと音を立てて剣の柄に文字が刻まれていく。
『我属在蒼月胸中到誅白面者』
「おいいぃぃー!!!」
「今度うしおととらごっこしたら晒させて頂きますね^^;」
「フヒヒwwwサーセンwwwww」
文字は刻まれなかった。



「お…おい…」
用心深く45ftほど離れたアッシュが声を掛けるとヴァシュマールは瞼を閉じたまま、魔剣を鞘に収めた。
「大丈夫だ。今は静まっている。」


「そんな物騒な代物、どうするつもりだ?」胡乱げに問うセレベス。


「この剣は永い時の流れの中で歪んでしまったのだ。正しい目的の為に使ってやればきっと元の姿を取り戻す。」


「…それにあの男の無念も晴れよう。」


ヴァシュマールの視線の先でアガメムノンの死体がサラサラと灰になって消えた。


「確かに強力そうな剣だが、望んで厄介事を背負い込むとは…理解しかねる。」呆れた様に呟くロウの横を通り過ぎ


息絶えた白豹の傍らに跪き、光の失せた瞳をゆっくりと閉じさせるヴァシュマール。
その肩口に黒い影の獣がまとわりつく。


「お前の良心は死んだわ。お前の腰では魂を啜る魔剣が飢えを叫んでいる。お前の末路もあの男と同じ、破滅しか残されていないのよ。」

彼にしか聞こえない声で獣がささやいた。
グラスが怪訝そうに耳を伏せたが、呪われた聖騎士は黙って拳を握り締めただけだった。


一連のイベントが終わり、一行が引き上げ時を見計らっていると聖堂の扉が開け放たれ、ヴァンサン・ヴノワ隊長と
グレイホーク市民軍第8連隊所属 特務第9小隊が現れた。


「こーりゃ、一体どういうこった?神殿区でゴタゴタを起こしたら俺達が相手になると言ってあった筈だな?」
「いやさ、俺達はコード神殿でちょいとお祈りをしただけのことさ。荒事家業だ、勢い信心深くなってね。」
ニヤリと笑って言い放つセレベス。
「神殿で祈りを捧げるのは日課だ。」
「俺、ここの売店で牛乳飲むのが日課。」
「あ、俺限定のコードさんストラップ買いに来た。」
続々と積み上げられる適当言い訳の山。
この山は後夜祭で火をつけられ、その周りでみんながフォークダンスとかを踊った。


「なるほどねぇ…それじゃあなーんにもなかったって訳だ。そんなら問題ないんだ。コード神殿が悪魔に乗っ取られてた、なんて事あるわけないしな。」
ぬけぬけと言い放つ隊長。
「この地区が平和なら世は全て事もなし、俺達第9小隊もハッピーってもんよ。」
「それじゃアタシらはお暇するよ。」
「おうよ…一応礼を言っておくぜ。」
小声で告げると素早い目配せをして隊長は副官の報告を聞く為、一向に背を向けた。


神殿を出かけたところで「あれ?とっ捕まった手下共ってどこ?」って思い出したので倒れてたデブ司祭に聞いたら
「あ、港湾区の収容所にぶっこみました。」って言われたので一行はそこに向かった。



するとその入り口には黒いローブをまとい、フードを目深に被った怪しい男がおり、時間に余裕があれば戦闘になる筈だったがそろそろタイムアップなので
エリニュスは失敗したか!デビルなどに任せるからこうなるのだ!やっぱデーモンの方がいいな!デーモンイズビューティフル!」
って言った。言ってからフードを跳ね上げるとハゲワシの頭をしたデーモン、ヴロックであった。
「俺達はデビルとデーモンだからすっげえ仲悪いはずなんだけど、アイウーズ帝国の古き者の命令で悪さしてるから多分共同作戦とか張ってても問題ないよね!」
「あ、そういうわけでお前ら誰に喧嘩売ったか覚えとけよ!古き者はお前達の鼓動を聞いたぞ!じゃあな!風邪引くなよ、寒いから!」
それだけいうと悪魔は夜の空へと舞い上がり、北の方へ消えていった。



「……なんか壮大な敵に目をつけられたなあ。」
「上等だよ!デーモン上等!ぶっ殺してやんよ!上等!」
「なんでヤンキーなんだよ」
「いや、なんとなく勢いで…」
「黒い刃を振るう相手が見つかったようだな…」
「げえっ、ヤンキーの横にエピック!」
予言に記されたエピックヤンキーの出現であった。


収容所の中には飲んだくれの酔っ払いとか、運の悪い商人とかに混じって涙目のナイトウォッチ団員達がおり、無事保護された。
時刻は明け方近くなっており、大変な冷え込み様であったので風邪を引いては大変 と一同は一杯やりにブレイド&スターズに雪崩れ込むことにした。

しんしんと雪の降る道を無遠慮な一行がどたどたと去っていく後姿を最後に、番外編は幕を閉じるのであった。

*1:不穏ネーム。ネーミングメソッドの元ネタは聖刻1092に出てくる八の聖刻にして白の一、白き王の操兵ニキ・ヴァシュマール 操縦者を取り込んだり、好き勝手に暴れたり、作った人・神だったりの典型的暴走すると世界が滅ぶ系ロボ。かっこいい。

*2:ブレカナ用語 DPが低いキャラに対して使われる形容詞。出会い系シーンで相手の目を覗き込んだ後に使われることが多い。例:「昏い…まるで夜のようだ…。」

*3:あとで確認したらヘクスブレードは善だとなれなかったのでセッション終了語にデータが色々変わった

*4:不穏ネーム。元ネタは聖刻1092に出てくる風の八機神。術師形態のロウ・ブライマ、剣士形態のタイクーン・ロウの2形態に変形する。聖刻1092から名前を引っ張ってくるのはPLの山羊さんのメソッドだったが、ここに来て伝染性を発揮。ゆるゆるグレイホークはケイオス・ヘキサだけでなく、アハーン大陸からもポッシビリティー・ウォーを仕掛けられた。

*5:セッション前に「使いたいキャラクターがいっぱいいて悩ましいねー」 という話をしていたので「サタスペみたいにPCの入れ替えできると面白いんじゃね?」という実にアバウトな思考の元、AP消費してキャラクター入れ替えルールが試験的に搭載された。

*6:後でルールを確認したらブラックレイザーに殺された魂は復活に失敗する可能性があったのだが、失敗したらしたでまた大惨事だったので見なかったことにした