レイニー・テイラー著 桑原洋子訳 『星影の娘と真紅の帝国』

星影の娘と真紅の帝国(上) (ハヤカワ文庫FT)

星影の娘と真紅の帝国(上) (ハヤカワ文庫FT)

星影の娘と真紅の帝国(下) (ハヤカワ文庫FT)

星影の娘と真紅の帝国(下) (ハヤカワ文庫FT)


前巻

煙と骨の魔法少女 (ハヤカワ文庫)

煙と骨の魔法少女 (ハヤカワ文庫)

の核心部分にド派手に触れるため、読んでない人は避けた方が安全太郎です。









”私の大事な娘よ。二度、娘になってくれたおまえは、私の喜びだ。おまえの夢は私の夢、そしておまえの名前は真実だ。おまえは我々の希望の全てなのだ”

蘇生師ブリムストーン

炎を宿した天使の帝国と、奴隷の軛を逃れて反逆したキメラの戦争が千年続く異世界エレツ。


人間界で起きた悲劇により、獣達、キメラの都は陥落し、”総司令”と蘇生師ブリムストーンは喪われた。


恋人の犯した罪に絶望したカルーは獣達の蘇生師として、彼等を地上に隠し、死者達に身体を与える仕事を続けていた……


天使と悪魔の恋人が、運命に引き裂かれたけど生まれ変わってもう一度出会ったぜ。でも、争い合う世界と過酷な運命が再び二人を引き裂こうとするから二人は愛し合ってるけど


誤解したりすれ違ったりでなかなか素直になれないぜ。


そういう話なんだけど、この話にはブリムストーンさんがいる。


ブリムストーンさんはなんかどう見ても悪魔にしか見えない異形の蘇生師で魔術師。


彼は獣の都とプラハとの狭間にポータルを開き、そこで戦死者達を蘇生させながらカルーを育てた。


一度は死なせてしまった娘を。


本編中で幾度と無く描写されるブリムストーンの厳しくも温かな愛情と、異形の家族達との思い出。


あまりにも過酷な死を遂げた娘を幸せにしてやりたいと作り変え、人として育てたブリムストーンさんを襲う悲劇はあまりにもエピックであり、これ読んだら堪らへんでホンマに。


魔術の代償として用いられる苦痛。


その苦痛を取り出すためにブリムストーンは人間界で生き物の歯を集めており、プラハの片隅の店で後ろ暗い者達に魔法を与える代わりにあらゆる生き物の歯を受け取っていた。


最早存在しないその店。優しい獣達の住む、薄暗い店内。幼い彼女のために彼等がこしらえた寝床。背伸びして覗き込んだカウンター。


カルーの2度めの揺籃期の思い出が本編の土台としてガッチリそびえ立っており、その後のカルーを襲う過酷な運命はあまりにもエピックであり、これ読んだら堪らへんでホンマに。