ブランドン・サンダースン著 川野靖子訳 王たちの道1 白き暗殺者


王たちの道 1 白き暗殺者 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

王たちの道 1 白き暗殺者 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)


ブランドン・サンダースン著 川野靖子訳『王たちの道1 白き暗殺者』読んだ。どえらい面白さであった。


守護者たる光の騎士が人類を見捨て、立ち去って数千年。

4人の主人公が不吉な大災厄の気配が迫る分裂間際の王国で、陥れられたり、抗ったり、陰謀を練ったり、誇り高く戦ったりするお話なのだ。ジェダイみたいな騎士階級”破片士”も出る。

破片士は非常に貴重な武器である”破片剣”を持っている。ライトセーバーとか斬魄刀みたいな代物で、一本一本異なる形状と名前を持っている。契約者にしか使えず、契約者が呼び出すとその手に顕れ、無生物はバターのように分断し、斬られたのが生物であれば刃の当たった部分は死ぬ。

”破片鎧”は唯一破片剣を受けることが出来る。また、着用者の身体能力を著しく強化する。これも破片剣と同じで非常に貴重な遺産であり、金で取引することは出来ない。戦場で破片士を倒した平民はその破片剣を奪い、貴族階級”ライトアイ”に昇格すると言われているが、破片士と戦ったらだいたい皆死ぬので本当に貴族になったものが居るのかはわからない。


破片剣も破片鎧も驚くほど貴重で強力な武具であり、これと破片士の保有数が国家の勢力に直結する程だが、数千年前に人類を見捨てて立ち去った光の騎士達の武器に比べればこれすらもまがい物に過ぎぬ。実にカッコイイ。主人公のパワーアップイベントとか超楽しみになる設定。

ところでそんなファンタジー王国の王様が破片剣を持ってジェダイみたいな動きをする暗殺者に殺され、年若き息子が戴冠し、復讐を宣言して暗殺者を放った隣国へと宣戦布告するところから本編は始まるわけですが、これねえ、もうねえ、堪らないのよ。ホントに面白いのよ。

兄である王を守れなかった事を悔やむ王の叔父、戦場で捕虜にされ最前線で使い捨てにされる奴隷へ落とされた兵隊長、没落寸前の実家を救うために大博打に出た貴族の娘、そして王を暗殺した”白き暗殺者”。彼は自らの意思を放棄し、”誓いの石”を持つものの命令に絶対服従する最強キャラクター。

主にこの4人を主人公にした群像劇として本編は進行するんざますが使い捨て奴隷にされた兵隊長のカラディンさん。こいつのカッコよさときたら三千世界に響き渡るレベル。初登場時には部下全員から慕われ「あいつに付いて行けば大丈夫」って言われてるカリスマ指揮官。平民なのに超強い。輝いてる。

なのに次に出てきた時は部下が皆死んでて、本人も焼き印押されまくりの目が虚ろな奴隷になってる。ヤバイ。「守れなかった……」しか言わない。そんなカラディンさんが最低最悪のどん底から這い上がる負けヒロイックを見よ。最初に徹底的にぶっ叩かれて負けたキャラクターは最早無敵だ!震えるぜ!

ブランドン・サンダースンはとにかく上手な作家で『ミスト・ボーン』の時も「うわあ、そう来たか!」って展開が多かったんですが『王たちの道』はド直球のヒロイック展開。堪らぬ。あとカラディンは『ミスト・ボーン』の重要キャラ”ハッシンの生き残り”ケルシャーの別バージョンて感じでイカス。


読みながら10回位白目剥いて痙攣起こすかと思った。それくらい面白かった。だが、510ページある1巻は本国で出た第1巻を三分冊にした1冊目なのだった。うわああ、長い!これ絶対すっげえ長いぞ!完結まで10年以上かかるタイプだ!うわあ!でも無茶苦茶面白いんだもんよぉー!マストバイ!