リー・バーデュゴ著 田辺千幸訳 魔法師グリーシャの騎士団1『太陽の召喚者』魔法師グリーシャの騎士団2『魔獣の召喚者』

太陽の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団1)

太陽の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団1)

魔獣の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団)

魔獣の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団)


革命前夜の帝政ロシアそっくりな異界の王国ラヴカ。
この国には
まあ、生きてける程度に搾取されている農民。
彼等から富を吸い上げて肥え太る王族、貴族。
王の横に控えるラスプーチンそっくりの怪僧がいる。

かつてのロシアにないものも居る。
グリーシャと呼ばれる特殊能力者達がおり、彼等の中で最も強力な能力者は”闇の王”と呼ばれ、恐れられている。
”闇の王”率いるグリーシャの騎士団こそが、ラヴカを支える力の基盤だ。
だが、ライフル銃を始めとする近代兵器の発展が、炎を操り、風を呼び、不可視の手で心臓を握りつぶす能力者こそが力であった時代を過去の物にしようとしていた。
鉄の量が勝利を決める世界の到来は近い。
グリーシャ達は驕り高ぶりつつも、自らの特権と有利が長くは持たないことをどこかで感じ取っている。


ラヴカは悲劇に分断された王国だ。
古の昔、初代の”闇の王”、一代に一人しか現れないと言われ、闇と影を支配する力を持つ強大な能力者が抱いた野望により巨大な闇が国土を覆った。
自らの愚行により初代の”闇の王”は滅びたが
王都と海岸線を隔てるように、かつて人であった怪物たちが蠢く闇が蔓延ってしまった。
真の海への道を隔てる闇に包まれた砂漠”偽海”。
頼りない灯火を掲げた砂船が”偽海”を渡るが、船が無事に辿り着く可能性はあまり高くない。


ヒロインのアリーナは公爵の救護院で育った孤児出身の冴えない地図筆記者である。
同じ救護院育ちの幼なじみマルは、ハンサムで陽気で、斥候の腕なら誰にも負けないモテモテのスカウトだ。
二人は救護院を出た後軍に入り、同じ任地へと向かっている。
妹のように扱われつつもマルへの思いを胸に隠し続けるアリーナ。

二人の部隊が”偽海”を渡ることになり、彼等の乗った船が闇の怪物の襲撃を受け、アリーナの目の前でマルが命を落とそうとした時

眩い閃光が夜を切り裂き、アリーナは自分こそ、ラヴカの民が、王が、怪僧が、そして”闇の王”が渇望した”太陽の召喚者”である事を知るのだった……



という感じのお話。
プロローグのラストの一文が最高に気に入ったので、ゆっくりと読んでたんですがこのほど読み終わったのだ。
お話は力強く第3巻につづいていた。三部作の最終巻に。
この文章を書くためにAmazonのリンクを呼び出したら3巻は今月末の発売だ。オーイエー!ナイスタイミングじゃないのー!



カッコイイ設定と割とよくあるスタンダードな話運びが楽しいんですが

一番好きな幼馴染はモテモテだし、やっと自分のとりえが見つかって対等になれたかと思ったら、偉くなりすぎちゃって彼との間に溝ができちゃうし

控えめに言っても誇大妄想の気があるグレイトフル国家実力者”闇の王”もアタシにご執心だけど彼ってば私の能力がほしいのか、私の心がほしいのか分かんない。でも、パワーあるクリーチャーの孤独が私と彼を繋ぐ共通点。
でも、やっぱ無理だわアイツやばすぎ。

あと、王子様とかもアタシのこと超NEEDしてるけど、やっぱり私の力とか象徴としての存在とかのほうが大事みたいだし、嘘つかれたし、信用出来ない!でも彼ってば時々捨てられて犬みたいな目でアタシの事見るし……


もっと言うと、目のグルグルしたラスプーチンそっくりの高僧もアタシに夢中だし、縋るもののない貧民はもうアタシの事大好きすぎてイコン作るわ、見つけたらお祈りしながら揉みくちゃにしてバラバラにしようとするわで

もはや国全体がアタシに夢中。でも、アタシが欲しいのは彼の心だけ……!この力と責任さえなければ……


そんな感じなので、やや主人公にヤキモキするシーンが多い。

基本は幼馴染のマルとアリーナの心のすれ違いと仲直りで進むので、「いや、そういう大事なことはちゃんと言え」「傷ついた顔をして問題から走り去った結果、さらなる大惨事が」って展開が何度も起きる。

でもいい加減我慢しきれなくなったタイミングで主人公が突然ブチ切れてビームを放ち、聖堂を木っ端微塵に打ち砕いたり、自らを利用しようとした権力者に恐怖の味を教えたりするのはとてもいいです。



能力者たるグリーシャの力を高める「増幅物」の設定は
ハリー・ポッターの杖みたいな感じで「一人に一つのみ」「自らの手で殺した力ある生き物の一部」と決まってるんですが
アリーナは主人公なので増幅物スロットが三つある。
白き牡鹿の角、海龍の鱗、火の鳥の羽。
日本のファンタジーだと追いかけてって殺そうとしたけど殺せなくて心を通じさせると思うんですが、そこは欧米ベースなのでちゃんとぶっ殺すのが面白いわね。ハック&スラッシュよ。

書きたかったことは大体書いたわ。オーライ。これで終わりよ。続きも読むわ。