リー・バーデュゴ著 田辺千幸訳 魔法師グリーシャの騎士団3 白光の召喚者

白光の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団)

白光の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団)


平凡な娘が救いを求める人々が渇望した力を得たことで聖人となり、実力者、権力者、幼馴染からモテモテになるけれども同時に過酷な運命に翻弄される事になるロシアっぽいファンタジー完結編。

今やラヴカの王国は”闇の王”と第二王子ニコライの二勢力に分かたれ、内乱に国内は荒れていた。

禁忌の力に手を出し”偽海”の闇を広げることで周囲を併呑し、ラヴカを強くしようとする”闇の王”

王宮の惨劇を生き延び、無能の仮面を脱ぎ捨てて国を奪還すべく奔走するニコライ。


彼らが共に探し求める”太陽の召喚者”、聖女アリーナはその時、怪僧アパラットの支配する地底の聖域で生きながら葬られようとしていた。


生きた娘より、死んだ聖人。

光の届かぬ地下に幽閉され、アパラットの野心の為に傀儡を演じざるを得ないアリーナ。

宮廷での戦いの末、彼女の髪からは色が抜け落ち、光を呼ぶ力は失われ、”闇の王”その人の力の残滓、影を呼ぶ力がその身には宿っていた。


一刻も早くこの牢獄を脱出し、”偽海”を消し去るために必要な最後の増幅物、ラヴカそのものの象徴、火の鳥を探しださねばならない。


囚われのアリーナとその幼馴染マル、生き延びた仲間達は静かに計画を練り始めるのだった……


かっこ良すぎる前巻ラストよりの続きは地の底から。


文字通り、殉教の覚悟で”闇の王”との戦いに挑んだアリーナは傷を負い、無垢さを失い、その姿もまた平凡からは遠ざかって聖女に相応しいものになっていた。


だがそれは彼女が最も求めた平穏で心穏やかな暮らしから遠ざける聖痕なのだ。


負ければ母国は闇に落ちる。

勝ったとしても傷ついた国を担う重責を追わねばならぬ。

そして自らの力を巡る人々の目論見

救いを求める民衆の声、そういった物に縛られることになる。


最後の旅が始まり、その過程で数々の悲劇が起き、仲間や友人達が次々とぶっ散らばって非業の最期を遂げる。

聖女も英雄も最後は死ぬ事が運命づけられている。


火の鳥を求める旅の果て、偽海の闇の底で彼らが手にしたもの、失ったものとは……



割と浮ついた感じのまま展開してきたストーリーが一気に重苦しくなり、それと共に面白さも加速していく三部作最終巻。


怪僧アパラットが見せる「あれ?こいつただの狂信者じゃないの?」って感じの以外な一面とか

エルリック・サーガ』のラストとラブロマンスを捏ね回したような激情のクライマックスとか、見所たくさん。実に面白かったし、カッコ良かった。