マイクシェパード著 中原尚哉訳 王立調査船、進撃! 海軍士官クリス・ロングナイフ


政治、経済、軍事を牛耳る血塗られた一族、地球外知的生命体との全面戦争後の新銀河秩序における復古王朝ロングナイフ家の跡取り娘、クリス・ロング大尉が主人公のミリタリーSF第六弾。

幼少期に誘拐事件で弟を亡くし、その哀しみから10代でアル中になり、惑星政府の首相であった父の選挙補佐の経験から民主政治と法に造詣が深く

星間メガコーポのCEOである祖父の薫陶で経済に強く、地球外生命体の侵略戦争で英雄なった曽祖父の影響で軍に入って一少尉からキャリアをスタートさせた超人ヒロインが主人公。


超面白いけどこの設定を読むたびに「過積載…!!」「どんだけ無敵……!!」って思ってたんですが、さすがに六冊も読んできたら飽きない理由も見えてきた気がするわ。



主人公と仲間達が派遣されたり左遷されたり赴いたりする先々の惑星世界は大抵ろくでもないトラブル(それは彼女の曽祖父の名でもある)を抱えているんだけど

主人公はそれに対処するために人類が築き上げてきた手段を全部取れる立ち位置にいるのよね。

腐敗した組織、扇動、侵略、外交問題、諸々に対して持てるリソースを使って如何に対応するか。

それによって生じた犠牲や代償をどう受け止めるか、というのが反復されるから毎回苦悩する主人公がかっこいいのよ。


そういうヘヴィーな所で苦悩する主人公も、ムカつく悪徳弁護士とか勘違いした軍人なんかの小悪党に出会うとサクッと経済封鎖したり、勲章を持ち出したり、自分の身分は王族扱いだから軍の階級は無視することを宣言したりして

スナック感覚で叩き潰すし、悪名が高まりすぎてボーイフレンドは出来ないし、やーん、あたしちょっと鼻高すぎない?などと思い出したように若い娘ッ面しだしたりするので気軽に楽しく読めます。

途中で柚子胡椒を少しづつ加えることで、最後まで味に飽きずにお召し上がり頂けます。

面白いのだ。