アリソン・グッドマン著 佐田千織訳 竜に愛されし少女イオナ

竜に愛されし少女イオナ 上 (ハヤカワ文庫FT)

竜に愛されし少女イオナ 上 (ハヤカワ文庫FT)

竜に愛されし少女イオナ 下 (ハヤカワ文庫FT)

竜に愛されし少女イオナ 下 (ハヤカワ文庫FT)


『竜に選ばれしものイオン』の続編にして二部作完結編。


鏡の竜の真の名を見出し、竜眼卿としての道を歩み始めたイオナ


だが皇弟セソンの謀反はイオナとその仇敵、鼠の竜眼卿イド以外の竜眼卿の命を奪い、皇宮に関わる全てのものの運命を狂わせた。


からくも簒奪者の手を逃れ、皇子と共に辺境へ逃れたイオナ


だが、彼女は自らの能力を制御することは出来ず


彼女の仕える皇帝は激しくも脆く、彼の兵は少ない。


そして彼女は仲間に明かせぬ秘密をいくつも抱えていた。



12方位の竜と竜眼卿の秘密。


イオナの祖先、キンラの残した謎。


祖先の剣に宿る恐るべき憤怒はなんなのか。


謎を解き明かし、竜眼卿の勤めを果たすために必要な訓練を施し、知恵を授けることが出来る人間はこの世にただ一人。


裏切りが露見し、今や皇弟セソンの獄舎で恐るべき拷問の責め苦に悶える仇敵、鼠の竜眼卿イドだけだった。


周囲の反対を押し切り、真実を隠したままイオナはイドの救出へと赴く……




塩田の奴隷出身であるが故、自らの素性を偽り続けたが故にイオナは自らが最も信頼し、心を預けなければならぬ人々に真実を告げることが出来ない。


彼女の恐怖と不安は最も彼女に近い人々のうちにも懐疑と絶望を芽生えさせてしまう。


そして竜眼卿のあまりに強大な力と権力は、虐げられ、常に弱者に寄り添い続けたイオナを強者、加害者の立場へと追いやる。


残虐超人もびっくりのハードコア悪役、皇弟セソンの冷酷非情な悪役っぷり


猜疑心に囚われた良き人々の苦悶とつよさ。


そして焦れったさ最高潮のハンデキャップを背負ったイオナがのたうち回りつつもエンディングへと這い進む様が面白いグッドファンタジー



第二部に入って面白さのギアが明らかに2段階くらい上がった傑作でございます。



繊細な心の襞をそっとなぞるような乙女の心理描写、飛び散る血と臓物の飛沫。代わりばんこに炸裂する物凄いワンツーパンチを是非ご賞味ください。面白いぞォー!