ロイス・マクマスター・ビジョルド著 小木曽綾子訳 マイルズの旅路

皇帝聴聞卿として訪れた人体冷凍保存技術が主要産業の星でいきなり拉致され、冒頭から薬物の幻覚に苦しみつつ広大な冷凍保存施設を彷徨うマイルズさん。

周囲には未来での復活を信じて冷たい眠りについている人々の列が数キロに渡って続いている……

いきなりキャッチーなホットスタートにぐっと来るわね!

悪いメガコーポ、陰謀、邪魔者を消すために利用される広大な冷凍施設……そして眠り続ける人々の権利を利用した惑星の無血占領計画。


超かっこいい背景設定で物語は淡々と進み……そしてヴォルコシガン卿は静かに主役の座を降りる。


読者はみんな薄々覚悟していた展開がついにインカミングして、物語は大人ワールドへ踏み込んでいく。


マイルズさんは死なないけど、冒険小説の主人公としての時代が終わりを告げたのだと感じたわ。

もはや彼は無能な跡継ぎではなく、帝国で最も有能な男であり、祖父に疎まれる孤独な少年ではなく愛する妻と4人の子供を持つ父親であり、その肩には責任が伸し掛かるのよ。


次回はマイルズさんの母君コーデリア(作者の分身とも言われ、作中のヒエラルキーで最強を誇った無敵存在)が主人公のお話が来るらしいけど

おそらく息子のシリーズが続いていた間持っていたコーデリアさんの無敵っぽさは失われるし、物凄い高圧のドラマが展開されるんじゃないかしら。

楽しみだけど、ドキドキするわね。