オキシタケヒコ著 おそれミミズク


関西の何処か。

過疎化が進む小さな田舎町。

無茶苦茶怖がりな青年ミズキは、毎週座敷牢に囚われた少女ツナの元へと怪異譚を語りに通う。

彼をミミズクと呼ぶ座敷牢の少女ツナは一体どんな素性を持っているのか

何故、囚えられているのか

何故怪談を好むのか

全てが謎に包まれたまま、この習慣は10年に渡って続いていた。


心身を擦り減らすこの奇妙な語り部を、ミズキは何故続けているのか。

慕情かはたまた友情か。

あるいは社会に馴染めぬ孤独な青年の依存に過ぎないのか。


拝み屋を探す奇妙な男が街に現れたのをきっかけに、全ての縁が収束していく。





文章も内容も丁寧で誠実なお話という印象だわ!

もちろん怖い。ホラーよ。

ミズキが集めた様々な怪異譚として披露される恐怖と

終盤の全てが明らかになった後に明かされる恐怖の毛色が違う(と思ったのよね)のが面白かったわ。


主人公が状況に翻弄される怖がりなので、京極夏彦百鬼夜行シリーズみたいな匂いもちょっとする。

真実の断片が色んな所に散りばめられていて中盤以降一気にそれが収束していくのも推理小説っぽい読み口ね。

でもそこからもう一歩踏み込んでSFまで転がり込んでいくのが凄く楽しかったのだ。

謎が解かれた後の穏やかな読み口

「つまりこういう事だったんだよ。脅かしてすまなかったね」的な雰囲気からさらに一転して

「ほうら!これが君に話していなかったもう一つの真実さ!バア!」ってなるのもよかった。

陰鬱なホラーとして始まるんだけど、どろどろしたものがなくて無茶苦茶爽やかに終わるのもよい。

グッドブック。お薦めよ。