グレン・エリック・ハミルトン著 山中朝晶訳 『眠る狼』
- 作者: グレン・エリック・ハミルトン,山中朝晶
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/04/06
- メディア: 文庫
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「帰ってきて欲しい」
故郷を捨てて軍人になり、世界各地の最前線で戦ってきた主人公バンさんの元に育ての親であった祖父ドノから手紙が届いた。
アイリッシュ・ゲール語で書かれたその短い手紙から、ドノのただならぬ様子を感じ取ったバンさんは、10年ぶりに故郷へと舞い戻る。
だが古巣へと戻ったバンさんが見たのは銃撃されて倒れ伏したドノの姿だった。
誰じゃあ!どこの外道がやりよった!?
ドノはこの道40年のプロフェッショナル犯罪者。
それだけ長く犯罪者を続けられているという事は当然のように慎重で用心深く、狡猾でヤバいヤマは踏まないということだ。
ドノの隣人たちも、彼の事は偏屈だが折り目正しい大工としてしか知らない。
そんな祖父が撃たれた。
おそらくは顔見知りの犯行。
ドノの仕事仲間、酒場の共同経営者、犯罪者、彼が関わっていたヤマ。
その何処かに答えがある筈だ。
祖父からみっちりとプロの心得を教え込まれ、戦場で鍛え上げられた主人公バンさんのアイリッシュ怒りの大追跡が始まる……!!
物語は過去と現在を行き来して
祖父銃撃犯を追う現在のバンさんと
ドノに育てられた少年時代のバンさんを交互に追う。
またこの回想シーンがいいのよね。
絵に描いたような”ザ・愛情にあふれているが不器用な男”と”最初は戸惑いつつも、愛情を受けて彼を慕う孫”の関係が色んなエピソードで描写されるのだ。
タイトルの『眠る狼』っていうの読んだときにね
「まーた、肉食獣が寝たり寝なかったりする系のタイトルかよぉ〜ホントこのジャンルは主人公を狩猟動物に例えたがるよなぁ〜〜」みたいなことをね、ちらっと
ホントにちらっとよ!? 思ったの。
だけど頭を撃たれておそらくは目覚めることのない昏睡状態にある祖父を気遣いつつ
知ることのなかった彼の10年を追うバンさんを見てると「もう、このタイトルしかない」ってなるのよね。
原題は『PAST CRIMES』(過去の犯罪)っていうらしいからこっちも渋いんだけど、わたくしこの邦題好きだわ。イカス。
主人公バンさんが肉体的に超強いアフガン帰りのレンジャーであるにも関わらず
あっという間に古巣の都市に順応して、社会を敵に回さない狡猾ムーヴしか取らなくなるのも面白かったです。
マンションの駐車場の何処かに、犯人が追跡ビーコンをつけた車が停まってる筈で、俺は部外者だけどそいつを探さないといけない!
って状況でバンさんが取り出すのは手のリハビリ用ゴムボールだ。
で、ゴムボールを車の下に転がしてから這いつくばって車を調べだすのよね。
通りかかったマンション住人が「こいつ何やってんだ?」って顔で怪しみだすとボールを拾い上げて爽やかな笑顔で
「こいつが転がっちまってね」って即、言い訳するの。
怪しまれない!!
僕はこの手のプロが使うチープなトリックみたいなのの描写に弱いんだ……