その11 「お礼参りだよラッパンアスク」
その日の朝、大門を潜った涙目の帰還者の報告にヴェルナの首都ミトリックは震撼した。
こないだも揺れていたので多分ミトリックは活断層の上にある。
それはそれとしてラッパンアスク攻略隊が物の見事に返り討ちに合い、いい気になったパラディンがフルボッコにされた上に麻痺って涙目で逃げ帰ってきたのだ。
ヴェルナ上層部は事の深刻さに難しい顔になると、額をつき合わせて相談を始めた。
無茶苦茶弱気になった高位の神官たちが「越境電話でエルミンスターさんとか呼べないか聞いてみる?」とか呟いてると
伝説的大司祭であるところのヘイゼン老師が立ち上がり、出されたお茶の湯飲みをぶん投げるとスクリーミングした。
「殺られたなら殺るまで殺り返すのがケジメだろうが!!!」
ヘイゼン老師は切れるとマジでヤバイ。
なにしろ伝説のアーティファクト「クルーク・オブ・ラオ」をぶっ転がして調子こいてたフィーンドのチームを根こそぎぶっ潰し、地獄の底に叩き返したのはこの知恵深い眼をしたジジイである。
これ以上怒らせたらアーティファクトの直管マフラーが再び爆音を上げて衛星軌道上からラッパンアスクを薙ぎ払いかねない。*1
もののついでとばかりに無能な教団幹部の間にも粛清の嵐が吹き荒れる可能性があった。
なので求人情報誌に再び広告が出された。
「行って殺ってくるだけの簡単なお仕事です! 国籍、身分証明不要!」
ラオ教皇庁の権威にかけて布告された求人広告は全世界に駆け巡り
駅前のオーロラビジョン、山手線の車体広告、新聞の折り込みチラシ
ゴールデンタイムのTVスポット、Mixiの上部のバナー、更に嵐の様なSPAMメールが撒き散らされ、世論はオルクス憎し一色で染まった。
新宿駅の掲示板にはXYZが書き込まれ、ラジオで賛美歌13番が流れ、板垣総理が裸になってプールで泳いだ。
そして、彼らがやってきた。
*1:クルークってなんだかわかんなかったので検索したら儀式用のステッキみたいなのが出てきました。改造バイクでも軍事衛星でもなかった