その15 びくびくアローマン

全ての良きものの幸いと

善と法の大義

星々の運行を守る義務とを背負って


ラッパンアスク攻略隊は肩身が狭かった。


最初に出発した時は人類の敵に雄々しく立ち向かわんと打って出る国家の英雄であった。


次に出発した時は友を失い、悲壮な覚悟を胸に運命に立ち向かうサーガの主人公であった。


三度目に出発した時は、国中が難事業の進展に歓喜し、国威は発揚され、娘という娘が彼らに花をなげた。


しかし、民衆の熱狂は冷めやすいもの。


過ぎた期待は容易に失望に取って変わるものである。


ダンジョン1階に住んでいるスライムに腰を抜かして出発から3時間で逃げ帰ってきた彼らに、今国民は冷めた視線を向けていた。


TVや新聞は彼らの何処が問題だったのか?

何故彼らが選ばれたのか?

ファルゼン老師の任命責任はどうなるのか?

果てはギリオンの卒業文集、ファルメールに対する廃嫡論まで飛び出し、マスヒステリーの嵐が吹き荒れたが


とある夜、額に青筋を浮かべたファルゼン老師がかめはめ波使用時の亀仙人みたいな形相で出かけると


市街にはナナハンの排気音と阿鼻叫喚が入り交じったエマージェンシーノイズが響き渡り


バッシングは止んで、次の週からテレビではプロジェクトXが人気を博し、人々は失ってしまった誇りを取り戻そうと思い直した。


しかし、急激な祭り上げから魂を危険に晒す戦い、仲間の死、そして屈辱に続くバッシングとジェットコースターの様な日々に翻弄された一行は今


凪のような無関心の中に放置されてなんかもう、どうしたらいいのかわかんなくなっていた。

わかんないまま妙な開き直りに囚われていた。

「潜ればいいんだろ!潜れば!」


「オルクスぶっ殺して大門前の杭に首をぶっ刺したらあ!!」


「でもミュータントキラーミミックだけは勘弁な!!」



若干腰砕けになりつつも再度ラッパンアスクに挑む攻略隊。

だが地下1階のミュータントキラーミミックは財政的に恵まれているとは言いがたい攻略隊にとってはマジ鬼門である。

マジックウェポンをぶんどられた挙句に溶かされては、ダメージリダクション/魔法武器 の敵が出てきた際に手も足も出ずに乙る。

朝昼晩の1日3回、1回3時間に及ぶ密なミーティングとスタッフ間のコミュニケーションが図られ

対応策が協議された結果、

「こっそり通り抜けて戦わずに済ませよう」

というベストな作戦が弾きだされた。

コンピュータの計算では成功率は99.9%の必勝の策である。


なので一行はまじビビリしながら白眼視の風を背に受け、真っ白な夢の帆をメインマストにあげると

名誉挽回のテレポーターに乗った。