G・ガルシア=マルケス著 鼓直訳 『百年の孤独』
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)
- 作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,鼓直
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 単行本
- 購入: 25人 クリック: 269回
- この商品を含むブログ (278件) を見る
密林の開拓村マコンド。
夢想家だが燃え盛る情熱を秘めた働き者の夫と、献身的でしっかりと地に足の着いた妻。
迷信に追われてやって来た二人が拓いた村は、その子共達が成長し、子孫が増えるに従ってみるみる栄えた。
100年に渡る一族の歴史は発明家、革命の英雄、世界を何周もした船乗り、途方も無いお大尽、世界一の美女
また圧制者となったもの、虐殺の犠牲者になったもの、生きながら自らを埋葬した者などを産んだ。
マコンドの村を訪れるジプシー達は迷信深い田舎の村人達にガラクタや魔術を見せて金を稼ぎ
メルキアデスと名乗る老ジプシーは死した後も一族の歴史とともにあって子孫達と語らった。
夢の様な100年が過ぎ、一族の最後の者が生まれたとき、メルキアデスの予言が成就し、マコンドに一陣の突風が吹く……
寝言と法螺が多めのイカスお話なんざますが
次々に現れるキャラクターたちの人生のエピソードを
「そして二人は幸せに暮らしました」で終わらせてくれないので
幸せが年月を経て老いに変わり、緩やかな失望と死別で終わるまでの流れが各世代のクライマックスになるところが、面白くて意地悪なところね。
特に一族の屋台骨を支え続けてきたウルスラが老いて身体が動かなくなってからの圧倒的「あ、こりゃもうあかん」フィール。
なんだかんだで回っていた家のことが上手く行かなくなり、屋敷は荒れ、客は減り、家族がだんだんバラバラになっていく過程。
相変わらず死者は死んだままウロウロするし、思い出したかのように唐突にファンタジックイベントが起きたりするのに、異様なリアルさで世代の終わりが描写されるのよ。
無茶苦茶くらい展開のはずなんだけどやたら勢い良くて、家の荒廃と共に一時期は栄華を極めたマコンドの村が滅びていく最終章の捨鉢な盛り上がりっぷりがイカス。
あとなんか矢鱈にちんちんの巨大な人が出てきて、恋人と家の中で見つめ合ったかと思うと街中が激震して獣の様な咆哮が轟くのが面白かったです。
解説にはプリミティブさの現れ的な事が書いてあってなるほどって思いましたがでもやっぱり笑っちゃうわね。
唐突にポップアップした突飛なエピソードとともに物語からキャラクターを退場させる荒業は積極的に真似していこうと思いました。
そう書き記した途端、彼は自らの中に幼い日に父親の膝に座って眺めた生物図鑑の熱帯に生息する蝶。その色とりどりの様々な生き物たちに対して抱いた強烈な憧れが依然として燠火のように燻っていることに気がついた。
その憧れは彼の成長と常に共にあり、胸の奥で小さな痛みを伴って燃え盛る小さな炎こそが、彼を気難しくし、同じ年頃の子供達から遠ざけ、自分が本来いるべきふさわしい場所にいない、という感覚を覚えさせて
孤独にさせていた原因であることに気がついた。
そこで彼は革張りのトランク2つと、ナップザック一つに荷物をまとめると、蝶達の住まう熱帯の森を目指して南へ向かう船に飛び乗った。
週ごとに送ると約束した手紙はやがて途切れがちになり、そしてジャングルの水の悪さを嘆く手紙を最後に便りは途絶え、それっきり彼の消息は絶えた。