マイク・シェパード著 中原尚哉訳 海軍士官クリス・ロングナイフ 勅命臨時大使、就任!
勅命臨時大使、就任! 海軍士官クリス・ロングナイフ (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: マイク・シェパード,エナミカツミ,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/01/24
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
星間戦争の英雄と星間連合国王の曾孫で、銀河間メガコーポのCEOの孫で、惑星国家首相の娘、兄は政治家、莫大な信託財産を持ち
アクが強くて跳ねっ返りだが凄腕揃いの部下達
滅びた異星文明のデバイスを組み込んだ人類宇宙最高のAI
ハンサムで優秀で自分のことを密かに愛している口うるさい警護官を持ち
諜報と犯罪に長けた武装メイド
死線をくぐり抜けた絆で結ばれた海軍士官達
ミレニアム・ファルコン張りの改造を施された偽装商船ワスプ号と
それを操る元海賊の船長&スタッフ
法務担当として引退した元最高裁判所判事
調査チームスタッフとしてあらゆるジャンルにまたがる学者チームと
完全武装の海兵隊一個中隊を率いて宇宙を暴れまわる無敵エスタブリッシュメントヒロイン、クリス・ロングナイフが主人公の人気シリーズ第7弾。
今回クリスとそのチームが挑む人類社会の無理難題は2つ。
外交と利権調整だ。
失われた異星種族のワームホールを発見したクリスとそのチームは「よっしゃ調査だ探検だ」とばかりに調査団を結成、銀河辺境をうろうろして様々な謎に挑んだり
辺境の人々を踏んづけている悪党(海賊とか腐敗した現地権力者とか)を血祭りにあげる日常を過ごしていたが、彼女達の前に恐るべき人類の敵対種族イティーチの戦闘艦が姿を現す。
両種族を絶滅寸前にまで追い詰めた「イティーチ戦争」集結より80年。
緩衝宙域を隔てて不干渉主義を貫いてきたイティーチの侵入に色めき立つ一行。
イティーチ族は人類にはちょっとやそっとじゃ理解できない複雑怪奇極まる儀礼に基づいて動き、一つでもそれを間違えれば即、流血の惨事である。
軍事的緊張、異文化との綱渡りのコミュニケーション、敵対民族に対する憎悪と偏見。
どう考えてもクリア不能ミッションなのだがクリス・ロングナイフの船には人類宇宙でベストな人材がかき集めてあるのでヒーヒー言いつつもコンタクトに成功、彼等の目的が判明する。
彼等は侵略者ではなく、イティーチ皇帝の特使であり、その目的はかつて停戦合意を結んだ人類の指導者、つまりクリスの曽祖父レイ王との会見だったのだ。
人類最悪の敵対種族からやってきた外交使節を、今も政治的なごたつきが続く本星の王のもとにどう連れて行くのか……?
後半は打って変わってアメリカ南部っぽい辺境惑星で農村部に住む酪農家と
都市部に住む工場経営者達の衝突を調整しに行く話。
星や町の名前に「ダラス」ってついてたり、凄くデトロイトっぽい産業形態だったりと
2017年のこの時期に読むと割と興味深い。
街の奴らは信用ならねえ!と改造ピックアップトラックに乗り、でかい銃を腰から吊るすのがフォーマルな田舎
VS
強欲で野蛮な百姓のせいで星の発展が遅れている!と鼻息の荒い資本家たち。
2つの陣営に引き裂かれた若き恋人達。
そして両陣営の対立を煽る影の勢力。
絡み合った思惑、利権、慣習と素朴な偏見。
考えるだけで面倒くさい諸問題と暴力がクリスの行く手に立ちふさがる!!
人類が取れるあらゆる解決手段(主に暴力と無尽蔵な資本)をスナック感覚で行使できる若きヒロインの運命は!?
このシリーズしみじみと面白いわ……翻訳がゆったりしたペースで進む間にあっちで新作が出て残り7冊。
全部日本語で読みたいわね。
ところで日本語版を出す以上原題のままのタイトルだと訳わかんないからだろうと思うし、今更変えるのはありえないんだけど
新任少尉、出撃!
救出ミッション、始動!
防衛戦隊、出陣!
辺境星区司令官、着任!
特命任務、発令!
王立調査船、進撃!
こんな具合に!がくっつくこのシリーズのサブタイトルだけはイマイチ野暮ったく感じてピンとこないのよね。
翻訳は凄く好きなんだけどこのサブタイトルのネーミングメソッドだけはなんかムズムズするわ。知覚過敏かしらね(ぼんやり顔)