クリス・ホルム著 田中俊樹訳 『殺し屋を殺せ』

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)


殺し屋専門の殺し屋マイクル・ヘンドリクス。


元特殊部隊隊員であった彼は数多くの非合法作戦に参加し、その過程で磨り減り、人間性を喪失した。


彼の最後の任務。アフガニスタンでの作戦中に部隊は仕掛け爆弾で全滅。

彼もまた命を落としたと思われた……



だがヘンドリクスさんは生きていた。


血塗られた俺の命に何の意味があるのか。


ところで故郷に駆け落ちまでしたマジラブの恋人を残してきたけど、こんなに罪深くて殺人マシーンみたいになっちゃった俺はもう彼女の前に姿を現せない……


だから死んだことにしておく!


でも、半自動式キラー・エリートの帰還兵に出来る仕事なんてない……


しょうがないから殺し屋になる!


これ以上罪を重ねて生きていくことが許されるのか……?償いをすべきでは……


よし!殺し屋だけ殺そう!



かくて殺し屋専門の殺し屋が生まれた。


決まった手口を持たず、必ず依頼を成功させ、姿を見せず、結果だけが残る。


FBIからも存在を疑われるハンターキラー。


その名も「ゴースト」!!





その名も「ゴースト」!!




その名も「ゴースト」!!!!




カッコよすぎて死ぬ。



本作は殺し屋殺しの専門家ヘンドリクスさんが、モラルと過去の傷に挟まれてにっちもさっちもいかなくなり


犯罪者や殺し屋やFBIや暗殺組織と華麗に死闘を繰り広げ


昔の彼女の事を思い出して涙目になったりしつつプロフェッショナルっぽいアクションをイカしたシチュエーションでビシバシ決める娯楽大作です。


主人公のド直球すぎる正義の殺し屋設定は凄いけど、彼が活躍する舞台とか、犯罪者の手口とか、かなり印象深い脇役達の描写を見ると

(これ、主人公の設定はマーケティングの結果で、本当に書きたいのは脇の方なんじゃ……)という疑り深い目になった。


疑り深い目になったまま読み続けたが、話がカジノに入ってから一気に面白さが加速して最後まで読み終えてしまった。

主人公が警察の包囲から脱出する際に、ホテルの部屋に侵入してその部屋を借りてた夫婦の服とかを盗むんだけどその時に

(彼らの休暇を台無しにしてしまった……)とか一瞬申し訳無さそうな顔をするのよね。

この細やかな気遣いでゴーストさんが好きになってしまった。


主人公のド派手な設定と裏腹に、彼が活躍する世界や登場人物達の描写が丁寧で、そこが魅力ね。