その13

恐るべき緑の門番は倒された。

その後復活してどっかに飛んでいったが、見なかったことになった。

ラッパンアスクへの橋頭堡は築かれ、ついに攻略隊の一行は深淵の入り口へと足を踏み入るのだ。

時に共通歴591年、鷹の月の事であった。

なんか前に春とか書いた気がしますが、鷹の月の事であった!


スクロール、ポーション錬金術カプセル等、物資の補給を済ませた一行は、ミトリックの大門前に設置されたテレポーターを

潜り、速やかにラッパンアスクのエントランスへと移動した。


石造りの回廊と自然の空洞が混ざり合ったような奇妙な通路が地底深くに向かって長々と続いている。

「なんでこんなにアヴァンギャルドな内装なんだ」

「おそらく、元からここにあった自然の空洞に後から実体化したラッパンアスクが溶け込んだのでしょうね」

「なんとはた迷惑な」

寝ぼけた感想を漏らしながら恐る恐る歩を進める一行。

これまで遭遇した脅威、入り口の恐怖、理不尽極まりない死の罠の数々。

内部に入るまでで一苦労である。

いよいよダンジョンアタック本番となるこれ以降では気が遠くなるような大惨事が待ち受けているに違いない。

油断は即、死に繋がるピタゴラスイッチであった。

ギリオンとファルメールの鎧にかかったルーマナスアーマーの放つ光が不気味な通路を照らし出す。

道はぐねぐねと曲がりくねって延々と続き、頭上に圧し掛かる岩盤の威圧感だけが静かに増していった。

やがて…道の向こうから、奇妙な声が聞こえてきた。

地底深くから吹き上げる風に乗って聞こえるその声は、まるで咽び泣く女の声のようである。


それを聞いて皆一斉にうっわあ…って物凄く嫌な顔になった。

物凄く嫌な顔になりながら戦闘態勢をとったままじわりじわりと進んでいく。

こんな時は光り輝く鎧が恨めしい。暗視方面に弱い一行は隠密行動が大の苦手である。