ブランドン・サンダースン著 川野靖子訳 王たちの道2 死を呼ぶ嵐

王たちの道2: 死を呼ぶ嵐 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

王たちの道2: 死を呼ぶ嵐 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ますます面白さが加速するメガトン級ファンタジー小説の第2巻。


正確には第1巻を三分冊にした日本語版の2巻なんだけど、まあいいや。細かいことはどうでもいい。マストその目に焼き付けろってレベルの傑作だわ。


メインになる主人公は3人。

ライトアイの大光主。貴族にして将軍。国王の叔父、”ブラックソーン”の異名を取るダリナル。

愛する人々を守りきれず”ブリッジマン”と呼ばれる戦闘奴隷に身を落としながらも戦い続ける不屈の男カラディン。

実家を救うため名高い女貴族の弟子になり、彼女の持つ宝物を盗もうと目論むも、彼女が見せてくれた世界に心奪われ、苦悩するシャラン。


さらに自らの意思を持たず、アレスカル全土に争いを引き起こす引き金となった恐るべき手練”白き暗殺者”を加えて

4つの視点に時折過去のカラディンのエピソードが混ざってザッピング気味に本編は進行する。


1巻目の時はカラディン以外のパートはちょっともどかしかったんざますが

今回はどれもいいぞぅ。

国の英雄で大貴族で、常に勝ち続け、尊敬を受け続けてきたダリナルは亡き兄、前王の後を継ぐかのように今は顧みられない”王たちの道”の教えに傾倒する。

それと時を同じくして彼は啓示を受けるようになり、人が変わったように考え深くなっていく。

だが、他の貴族たちはそれを老齢故の惰弱とみなし、彼を侮り始め、ついには彼の正気すら疑う声が上がり始める。

自らが狂っている可能性に怯えつつ、啓示に従ってもいいのか。

死を前にした兄が陥った狂気もこれと同じものではなかったのか。

自らの息子ですら父の正気を疑う事態に、彼が戦う相手は姿のない不安であり、倒し様がない相手に信念で抗おうとするダリナルの英雄っぷりはマジイカス。



シャロンは実家の危機を救うため、名高い”ソウルキャスター”にして学者である大貴族ジャスナー・コーリンに弟子入りする。

彼女の持つ力の源たるアーティファクトを盗み出すのがその目的なのだ。

だが、女性の教養は無駄なもの、という世界に押し込められていたシャロンの自我はジャスナーと出会って解き放たれる。

歴史、哲学、機知、教育。

彼女が与えてくれたもの、彼女自身の魅力に魅了され、世界で最も己にふさわしい場所に居るにもかかわらず恩人から盗み、元の窮屈な世界へ戻らねばならぬさだめのシャロンは苦悩する。

この辺ほんと上手いわね。


あ、カラディンさんのかっこよさについて語り始めると多分、内容を全部話さないと気がすまないくらいのカッコよさなので割愛します。

2巻ラストで明かされる衝撃の過去ったら鼻血吹いて倒れるかと思うたわ。

地団駄踏んで「面白い!面白い!面白いったら面白いんだ!」って叫ぶほどさ。

読まないのは勿体無いレベルの傑作よ。

次は6月か……指折り数えるしかない。このビッグウェーヴに。