ウォルフガング・ロッツ著 朝河伸英訳 『スパイのためのハンドブック』
- 作者: ウォルフガング・ロッツ,朝河伸英
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1982/03/30
- メディア: 文庫
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「この本を読めばほんもののスパイの世界がどういうものであるかがわかる」――佐藤優
って帯に書いてあったけど見えない文字で
(正しい知識を持ち、情報を分析して応用できる知能の持ち主であれば)って但し書きがついてる気がする。
もちろん僕にはよくわからなかった。
なにしろ日本での初版が1982年。原書が80年の出版だ。
36年前に出版された元スパイの回顧録である。
この人が現役だったのは半世紀前の話だ。
インターネットもSNSも携帯電話もない頃の話なので今はぜんぜん違うんだろうなあ……っていうのはなんとなく想像できる。
でもひょっとしたらそう思わせておいて実はこういうローテクな心構えやテクニックこそが今も大切なのかもしれない……
そういうどっちつかずな気持ちになる程度には僕はスパイにロマンチックなイメージを抱いている(それに無知だ)。
スパイ小説は何本か読んだけど、知的で洗練されたものほど眠くなった。
007はダニエル・クレイグが主演するようになってから毎回観に行っていたが、毎度なんとなくピンとこなかったので『スペクター』は見なかった。
『裏切りのサーカス』は頑張って観た。眠くなりながら3回に分けて観た。俳優の格好いいお芝居に助けられ、雰囲気のカッコよさに縋るようにして最後まで観たが、どうもちゃんと理解した気がしない。
『キングスマン』は好きだけど格好いいコードネームを持った超人組織として見たのでスパイ物としては観なかった気がする。
トム・クルーズの『ミッション・インポッシブル』は2が一番好きだ(4から先はまだ観ていない。評判が良いのでこのランキングは変動する可能性が高い)
このようなわたくしが本書の最初の章に載っている「スパイ適性テスト」で適性をチェックしてみても結果がCランクなのはしょうがないことといえよう!
この本では血も涙もない諜報組織のイメージではCIA、KGBと正面から殴りあって一歩も引かないイスラエルのモサドで伝説的な活躍をした著者が老後の生活資金の為にユーモアと自慢話と皮肉を交えて
スパイの生活を語ってくれる。
80年代の本なので語り口も80年台ハウツーっぽい。
もし君が君の妻にちょっとした嘘をつくのにも躊躇うようなら、悪いことは言わない。今の職場に辞表を出すのはやめておきたまえ!みたいな感じ。
著者の経歴と如何にしてスパイに転職したか、そしてその際にどう給料の額を確かめたか。
どうやって経理を黙らせ、必要な予算をせしめたか。
どうやって本部に内緒でこっそり結婚しちゃったか等が書いてある。
個人的に面白かったのは第4章の「第二の皮膚」先入先で怪しまれない偽装経歴を如何にして作るか(君の外見や内面にふさわしい、説得力があり、無理のない設定を選びたまえ!)が
演劇の役作りっぽかったのと
第9章「拘置所、刑務所、懲治監」の賄賂が使えるのなら、腐敗して非人道的な刑務所の方が先進国の規則に則ってしっかり運営された刑務所よりも居心地が良い話。
そして捕虜交換で釈放されて本国に戻ってきた著者が老後の資金を稼ぐために如何に本部の圧力を跳ね返して回顧録の出版にこぎつけたか の話。
「君がそんな勝手を言うのなら刑務所に入ることになるぞ!」
「エジプトのトゥーラ懲治監帰りの人間に言うセリフかな?」
ってやり取りは出来過ぎててイカス。
これを「アスガルドのエインヘリャルに言うセリフかな?」「レイヴンロフトから戻った人間に言うことかね?」等に置き換えることで『トーキョーN◎VA』や『D&D』でも応用が効くだろう。多いに利用したまえ!
私はそうするつもりだ。