マイケル・ウィットワー著 柳田真坂樹,桂令夫訳 最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜

最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜

最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜

D&Dの生みの親、世界初のRPGのデザイナーにしてキング・オブ・ぼんくら、ゲイリー・ガイギャックスおじさんの伝記。

子供の頃からイマイチ社会に馴染めず、想像力逞しく、冴えない感じの少年だったガイギャックスおじさんが(でも徒党を組んで喧嘩したり親の車を無断で乗り回したり海兵隊に入ったり19歳で結婚したりはしてる)

狂った様にゲームを遊び、パルプ雑誌に耽溺し、そしてまたゲームを遊び、ゲームコミュニティーの中心になり、そこから生まれてきたアイディアをまとめ上げてついにはRPGという遊びを作り上げ

それによって世界のエンターテインメントのあり様を変えてしまう話。


まーあ、妻子があるのに寸暇を惜しんでゲームして切れた妻が浮気を疑い、ゲーム会場に殴りこんでくるわ

ゲームに熱中しすぎて会社の設備で同人誌(意訳)を作ってクビになるわ

娘のボーイフレンドまで次々とキャンペーンに引きずり込むので、娘と別れた後も元ボーイフレンドが頻繁に家に来るわと

三千世界に響き渡るぼんくらムーブアクションの数々。

一発当てた後にD&Dの映画化企画を進めるためハリウッドに移住し、金に糸目をつけずに1流プロデューサーや監督に依頼して周り

コカインをキメて女優志望の美女達をはべらせ、どでかいダークブルーのキャデラックでナイトクラブをハシゴする段に至っては最早

スゲエ……すげえよゲイリー……映画に出てくる”事業で失敗する人”みたいだよ!って感動に打ち震えるしかなかった。

その後、不仲だった共同経営者の離反で社を追われる所まで完璧すぎる。


ゲイリー・ガイギャックスという人はRPG大好きマンであるわたくしにとってとにかく偉大なデミ・ゴッド枠の人なんですが

同時に彼の作った初期のダンジョンやモンスター、彼の家に集ってD&Dをプレイしていた人々の語る逸話(苛烈極まるダンジョン(恐怖の墓所)の罠を避ける為、プレイヤー達が牛を買ってパーティーの先頭を歩かせた)

そして『D&D Online』でゲイリー・ガイギャックス謹製!ダンジョンマスターのナレーションもゲイリー本人!

と謳って実装されたダンジョンのあんまりプレイする人のことを考えない難易度(雑魚が皆ダメージ抵抗持ちでラストにわんさと出てくるブラックスケルトンを殴り続けた前衛の武器はみんなへし折れる)

からして、「これはもしかすると相当ぼんくらな人なのでは……」という印象(馴れ馴れしくはあるが”親しみ”、と言い換えても可)を抱いていた。

この本読むと割と寸分違わずその通りというか、イメージがさらに補強されたわ*1

超面白かった。

*1:ところで作中でガイギャックスが友人達と会話をするシーンになると口調が全部翻訳者の柳田さんと桂令夫さんの会話そのままなのが無茶苦茶面白かったです。つまりそれはD&D日本語版のプレイヤーにとってはルールブックでお馴染みのあの口調ということなのだ