その2:

表に出ると早くも太陽は西の空に傾き始めていた。
夜が、近づいているのだ。
唯一のセーフゾーンであったシーコーストロードにヴァンパイア警報が鳴り響く。
彼方から押し潰された様に反響するサイレンが聞こえてくる。
むせび泣く様な警報音と共に足元のテクスチャが急速に書き換わり、周囲はホラー空間になった。

「落ち着くんだ。とりあえずこの場を離れて海岸沿いに南下しよう。」

パニックに陥りかけた一同だったが、アウカンの一声で冷静さを取り戻す。
アウカン・ヴィメイラガ。大きな男であった。
ハンサムでは、ない。
岩の様な顔はよく見ると人怪である。
ゴライアスであった。
だが、その顔が笑うのを見てみたい。人をそんな気持ちにさせる男であった。


海岸に出ると、ラシードが急に小首をかしげて「はてな?」といった。
このラシードはヘンチマン故に戦闘用のフィートなど何一つ取得しておらぬ。
索敵と罠の解除に全てを捧げたローグの概念存在である。
故に馬鹿みたいな達成値で視認判定に成功した。
「そこの茂みの影に、隠し扉があるぜ。」

ラシードの報告に怪訝な顔になる一行。
なんで海岸にいきなり隠しドアなのだ。
茂みをかきわけ、隠されていたハッチを押し開けると、小さなはしごが深く深く地中に向かって続いていた。
見通すことの出来ない暗い地の底から、不吉な風が吹き上がってくる。

一同がしばし固まったあと、入り口を右クリックしてみるとシステムメッセージで
「クエストレベル10、難易度HARD」と表示された。
入り口の横には遺書を書くためのテーブルと投函用の郵便ポストがポップアップした。


「よし!先に進むか!」


隠し扉は見なかったことにされた。